【緊急度1】どうにか払えるけれど苦しい
Q)返済額をどうにか払えるけれど苦しい
A)住宅ローンの条件を変更する
「収入が減って支払いに不安が生じたら、まず第一に借り入れをしている金融機関に相談しましょう」(深田さん、以下同)
銀行に返せない相談をするのは抵抗があるかもしれないが、’09年に施行された「中小企業金融円滑化法」では借入金の返済が困難になった個人に対し、金融機関は返済条件の見直しに応じることが義務化されている。
事実、コロナ禍においても住宅ローンの貸付条件の変更などの実行率は97%を超える高水準だ(令和2年3月10日~令和3年1月末)。
とはいえ、“丸腰”で相談に行くのはよくない。減額を希望する場合は、毎月の家計収支をまとめたうえで月々いくらなら払えるかを明確にすること。また元の返済額に戻すために、妻のパートや夫の副業、固定費を見直すなどの改善策と、いつごろから通常返済に戻せるかのスケジュールを立てておくのが望ましい。
「返済額を一定期間減らせれば、その間にパートを始めて収入を得たり、通信費削減や家計のスリム化を進めたりして返済費用をまかなうための準備ができます。延滞せずに返済を続けられるという点ではメリットといえますね」
ただし、減額はあくまでも返済の先送りという認識を忘れてはいけない。
「ローンは、ゆっくり長く返すとその分、元金の減りは遅く、利息も多くかかります。負担を理解したうえで検討すべきです」
【例】返済条件を見直してみよう
現在45歳。35歳で4000万円を金利1%、返済期間35年で借りたケース。35年のうち10年分を返し、残債が約2996万円(完済するのは70歳〜)。以下、4つの返済条件の見直し方法について、見直し前・後の返済額と結果を比べてみる。
【NG】一定期間の元本据え置き
〈前〉毎月11万3000円(利息2万5000円、元本8万8000円)
〈後〉毎月2万5000円(利息2万5000円、元本0円)
[結果]元本は減らず1年間で年間4万8000円も負担が増す
「銀行は元本の猶予はしても利息は絶対に猶予してくれません。ですから、据え置きと言っていますが実情は“利息だけ全額払ってね”ということ。元本には1円も充当されず、ローン残高は一切減りません」(深田さん)
モデルケースの場合、1年間元本据え置きにすると、月の支払いは約11万7000円となり、年間4万8000円もアップする計算に。残債は減らずに負担だけ増えるので避けるべき。
【NG】返済期間を延長する
〈前〉毎月11万3000円(利息2万5000円、元本8万5000円)
〈後〉毎月8万5000円(利息2万5000円、元本6万円)
[結果]ローン完済が80歳に! 老後破綻まっしぐら
返済期間を延長することで月々の支払額を減額。10年延長すれば、返済額は数万円ダウンとなるが、「返済期間の延長は契約自体の見直しに近い要素があるため、銀行など民間金融機関ではまずできません。『フラット35』では延長の仕組みはありますが年金生活で支払い続けるのは本当に難しいので、手を出してはダメ!」(深田さん)
【OK】月々の返済額を減らす
〈前〉毎月11万3000円(利息2万5000円、元本8万8000円)
〈後〉毎月5万円(利息2万5000円、元本2万5000円)
[結果]ローン残高の減少ペースは1/3にダウン。落ち着いたら挽回を!
返済額を元の金額の約半分の5万円に減らした場合、元本も約半分返せると思いがちだが、「返済は基本的に“借金取りの法則(利息優先)”が適用され、返済額からまず利息を取るので、5万円から利息の2万5000円を引いた残り2万5000円が元本に充当します」(深田さん)。
これにより本来なら、この月は8万8000円が元本から減るはずだったのに対し、返済ペースは約1/3に低下。1年間減額後に元に戻すと、年間約3万円返済額が増える計算になる。減額する場合は、後々の影響をしっかり考える必要がある。
【OK】ボーナス払いをやめる
〈前〉毎月9万6000円+ボーナス月10万円×年2回
〈後〉毎月11万3000円(利息2万5000円、元本8万8000円)
[結果]毎月の返済額増加に耐えられるか慎重な判断を!
「ボーナス返済分が月々に分割されるので、毎月の返済額が増加。コロナ禍で残業代などの減額も少なくないため、月々の支払いが増えても払い続けられるか熟考を。ボーナス返済分は貯蓄を使うなどで対処したほうが無難だと思います」(深田さん)