【緊急度2】払い続けていくのが厳しい
Q)返済額を払い続けていくのが厳しい
A)リースバックで住み続ける
住宅ローンの条件を見直しても返済が難しい場合は、賃借を前提に住宅を売却する「リースバック」がある。これは家を売った売却益を住宅ローンの返済に充当し、買主に賃貸料を支払うことで今の家を借りる仕組みだ。
「最大のメリットは、今の家に住み続けられること。高齢の親がいて引っ越せない、子どもの学区を変更したくないなどの事情がある人には合っていると思います。住宅の所有権はなくなりますが、固定資産税や修繕積立金といった固定費が不要になります。年間の家賃は、売った金額の6~8%が相場です」(高橋さん、以下同)
注意点は、アンダーローン(住宅の売却代金がローン残高より多い)ならローン返済につながるが、オーバーローン(住宅の売却代金がローン残高より少ない)だと、リースバックした家の家賃と住宅ローン残高の“二重払い”になること。
また、住宅の売却価格は時価総額の7~8割が相場なので、3000万円の住宅は2100万円~2400万円になることも。とはいえ、条件の悪い競売にかかるよりは検討する意味がある。
そして、売却に踏み切るときの買主選びは慎重に。個人投資家に売った場合、途中でオーナーが代わり賃借できなくなる、賃貸料が上がることもあれば、買主が破産して家が転売され追い出された例も。
「知り合いや身内は安心感はありますが、家賃のやりとりで関係がこわれたり、買主が死去して相続人ともめることもあります。安定感から、リースバック事業を行っている大手不動産業者や金融機関などを選ぶ人が多いようです」
住宅を活用して住むには所有権を失わない「リバースモーゲージ」もあるが、一般的に55歳以上が対象で、家を担保にしても融資額は土地の路線価(相続税の基準となる土地価格。時価の7割程度)の50%程度。融資金の使途もリフォームや老人ホームの入居一時金に限定されたり、家族の同居は原則配偶者のみなど制約が多い。
【緊急度3】生活が追い詰められている
Q)生活が追い詰められている
A)コロナ版ローン減免制度を申請する
ローンの変更や「リースバック」も難しいとなると、家を手放すほかないのだろうか。
「コロナの影響で失業した、事業が大きな影響を受けた人であれば、住宅ローン以外の借金を免除・減額できる、コロナ版ローン減免制度(正式名称は“自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン”)が申請できます」(高橋さん、以下同)
もともと自然災害の影響を受けた個人の債務整理を目的として、平成28年4月から運用された制度だが、令和2年10月からは新型コロナウイルスで困窮する場合も適用可能に。住宅ローンだけなら支払える場合、それ以外のカードローンや消費者金融からのローンを減免する方法で家を失わずにすむ。また、いわゆるブラックリストに載ることもないので、生活や事業再建の道を残せる。
制度を利用するには、まず最も多く借り入れしている金融機関の同意が必要だ。
「同意を得た後に弁護士などの専門家による債務整理手続きの支援を受けても、ローンの減免は話し合い(特定調停)で決まるので必ずしも減免されるとは限りません。しかし、自己破産よりも一部資産を残せますし、申請に費用負担がありません。ハードルは高いですがトライする価値はあると思います」
(取材・文/河端直子)
《PROFILE》
高橋愛子 ◎NPO法人「住宅ローン問題支援ネット」代表理事。宅地建物取引士、不動産コンサルタント。住宅ローンなど不動産の相談を無料で年間300件以上受ける。著書に『老後破産で住む家がなくなる!あなたは大丈夫?』など。
深田晶恵 ◎ファイナンシャルプランナー。「生活設計塾クルー」取締役。個人向けコンサルティングを中心に、メディアなどでマネー情報を発信する。『住宅ローンはこうして借りなさい』ほか著書多数。