自己負担引き上げで今の倍支払うことに
厚生労働省が行った2018年度の医療給付実態調査によると、病気になって入院した際、1回の入院にかかる費用は約47万~54万円。ただし、これは病気や治療の種類などによって変わってくる。
御喜さんへの取材をもとにした各種がん、心筋梗塞、脳卒中などの入院・治療にかかる平均額を下に示した。各病気の治療法は最新の診療ガイドラインで強く推奨されるものを中心とし、入院費や入院日数は前出の医療費給付実態調査などをもとに計算されている。
【病気にかかる医療費 平均額】
●大腸がん 97. 4万円(3割負担:約29. 2万円/1割負担:約9. 7万円)
●胃がん 95. 4万円(3割負担:約28. 6万円/1割負担:約9. 6万円)
●肺がん 85. 5万円(3割負担:約25. 7万0円/1割負担:約8. 6万円)
●乳がん 77. 2万円(3割負担:約23. 2万円/1割負担:約7. 7万円)
●心筋梗塞 177. 55万円(3割負担:約53. 4万円/1割負担:約17. 8万円)
●脳卒中 159. 7万円(3割負担:約47. 9万円/1割負担:約16万円)
(※手術費、入院費、食事・生活療養費など、治療を受けたときにかかる費用含む)
例えば、乳がんの医療費平均額は77万2000円。
「実際に私たちが支払うのは、その1~3割です。前述した国民皆保険制度の恩恵によるもので、現役世代は3割負担の約23万2000円、高齢者は1割負担なら約7万7000円となります」
ここで、認識しておかなければならない問題がある。政府は2022年度以降を目標に、75歳以上の医療費の自己負担を1割から2割に引き上げる方針を固めている。
「日本では医療費などの社会保障費が、財政を圧迫し続けています。その状況をより深刻化させているのが2020年の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックです。コロナ対策で膨大な予算がつぎ込まれ、このままでは財政が逼迫するのは確実。現役世代の自己負担3割が5割負担になる日がやってきてもおかしくありません」
もしそうなったら、医療費の半分は自己負担に。平均額から試算すると乳がんは38万6000円、大腸がんは48万7000円などと費用負担が大幅に増えることになる。
「将来、国民皆保険制度の存続自体が危ぶまれる可能性もあります。同制度の崩壊はお金の負担や不安をもっと増大させるでしょう」