今回の松本まりかのCMに関しては、吉田さんのように肯定派が多いのも事実。CMが炎上していると話題に上がったときには「彼女は台本通りにやってるだけ」「まりか様は悪くない」と言った擁護派も現れた。
ただの「炎上案件」で終わらせないところに、松本まりかの凄みを感じさせる。
「女優として実力もキャリアもある。彼女が売れたのは30代半ばだし、やっぱりいろんな艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えてきたわけですよ。そんなCMの一つが炎上したところで、彼女は負けないというか(笑)。
それに松本さんは女性票が高い。同じ“あざとい”でも、田中みな実のことが嫌いな人はいても、松本まりかを嫌いな人ってあんまりいないんじゃないかな」
確かに、男性からの支持はもちろん、女性から嫌われそうだけど嫌われないという、不思議な魅力がある。
で、何のCMでしたっけ?
加えて、YouTubeのサントリー公式チャンネルにアップされたCM動画の再生回数を見ても、彼女への(またはCMへの)関心度の高さがうかがえる。15秒バージョンは40万回を突破!
「賛否両論あって、ネットでも話題になり、YouTubeの再生回数も伸びているということは、CMとしても成功といえば成功なのかな。だけど、あれ? これって何の商品のCMだっけ? ってなるのが正直なところ(笑)。
例えば天海祐希さんが出演していた缶チューハイ(-196℃ ストロングゼロ)のCM。あの天海さんのキャラは男の人が求めるものではないけれど、お酒の刺激感とか、爽快感、その商品がどんなものか伝わってくるし、飲んでみたいなってなる。でも『鏡月』のCMは、商品よりも女優に目がいっちゃって、あれを見たからって『鏡月』を飲もう、とまでならない。そういう意味では、CMとしてこれでいいのかな? と思いますが。
ただ酒飲みから言わせれば、『鏡月』はバーやスナックでボトルキープされてる酒って感じだから、話題の女優を使って、これまでのイメージを払拭するためにはいいのかも」
CMは世相を表すもの。今後、女性が出演するお酒のCMも、形を変えていくのでは?
「10年前と今では、性的な役割が変わってきた。洗濯洗剤のCMも、生田斗真、二宮和也、菅田将暉……と、今や男性の起用が多いじゃないですか。洗濯をするのは女性だけじゃないってメッセージもあるのかなと。
お酒のCMも変わってきてるとは思うんですけど、なぜか“割りもの系”は、女性をほろ酔いにさせて、色っぽくするモード。“ウイスキーがお好きでしょう”のCMでの井川遥とか小雪とかもそうだった。ローラの『ジムビーム』のCMみたいに、ただただかっこいいやつとか、女が飲んでウメェみたいなCMがもう少し増えてもいいと思うんですけどね(笑)」
何はともあれ、これだけ話題になることを見越していた企業側の計算勝ちといったところか。10年後、このCMを見たときに、私たちがどう思うか。そこに描かれていた「女性像」にゾッとするか、可愛いと思えるかーー。そこに答えがあるのかもしれない。