『好きな女性アナウンサーランキング』(ORICON)で2年連続1位、初めて出版するエッセイが発売前に重版が決まるなど、テレビ朝日・弘中綾香アナの勢いはとどまるところを知らない。
入社1年目から『ミュージックステーション』のサブMCに抜擢、『激レアさんを連れてきた。』でオードリーの若林正恭と組んだことで、そのキャラクターが世間に認知されてブレイク。スパッとした司会進行にも定評がある。しかしながら、人気が増すにつれ、その尖った部分がメディアやネットで叩かれるようにもなった。主婦を対象とした『嫌いな局アナランキング』(週刊女性)で不名誉な1位になってしまうことも。
そんな彼女が、2019年からウェブメディアで連載していたエッセイをまとめた『弘中綾香の純度100%』を上梓した。
《誰からも歪曲されず、脚色されることのない、純度100パーセント、そのままの私を受け取ってほしい。(中略)これは、私に対する世間のイメージへの挑戦であり、抵抗であり、希望の光》
こんな“所信表明”で始まるこのエッセイ、読まないわけにはいかない。
大人になってからの恋愛は……
《ただ、私はこういう人となりなんだ、というのを自分の言葉で伝えたかった》というだけあって、様々な角度から彼女の考えや思いを発露させた一冊だった。
オリンピック関連の仕事に並々ならぬ情熱を燃やしていたこと、フリーアナには向いていないとの自覚、他人と分かり合えることなどないという諦めなど、彼女の人柄や知られざる内面を垣間見ることができる。
しかし、読み終えてふと思い返すと、全くといって触れられなかったテーマがあることに気づく。それは“自身の恋愛”についてだ。
たとえば、『大人になってからの恋愛は』と期待が膨らむタイトルがつけられた章のページを開いてみたものの、メインは2年付き合ったが価値観の違いで別れた“友人”の話。ほかにも、バレンタインがテーマの章でも、「日頃のお礼を込めて女性が男性にチョコレートをあげる」という社会人の暗黙のルールに疑問を呈するような切り口だったり。
エッセイ全体を通じてわずかに出てくる恋愛っぽい要素を集約しても「女子高生時代は恋らしい恋もしていなかった」、「大学時代に彼氏がいた」ということくらい。過去の恋愛に触れることはもちろん、恋愛観のようなものさえ、ほぼ綴(つづ)られることはなかった。
むろん、女子アナのエッセイにそういった内容は不必要という判断なのかもしれないが、『あざとくて〜』ではいつも男を落とすテクの話題に花を咲かせているし、かつては自身の恋愛についてもオープンな印象があっただけに意外である。それは2018年、人気バンド『ONE OK ROCK(ワン オク ロック)』のギタリストToruとの熱愛が報じられたときのこと。
Toruが住むマンション近くにあるビストロでワインと肉を楽しみ、手繋ぎで帰宅する様子をスクープされた直後の『激レアさん』で、若林に「(直撃されたのは)英語で言うと深夜の何時くらい?」とのバンド名を匂わせるイジりを受け、まんざらでもなさそうに「バカぁ〜!」とテレ顔を浮かべていたからだ。
編集でカットできそうなものなのに、堂々と“弘中アナに文春砲!”とテロップつきで放送したということは、「恋愛話も包み隠さず」なスタンスのあらわれではないのか。局としても、本人としても。