悪戦苦闘する総理「スガちゃん」へ
「努力は裏切らない」「人との縁を大事にしろ」そんな父の言葉を勇輝さんは胸に刻んでいる。
「父はいろんな方に僕らきょうだいを会わせてくれようとしています。袖触れ合うきっかけはつくるけど、それをどう育むかは自分次第だと言われます。紹介してくれた方をないがしろにすると、怒られますね」
昨年末に古希を迎えたが、生島のフットワークは軽快で、好奇心は尽きない。
「身体の栄養も大切ですが、精神にも栄養を上げないといけない。本を読んだり、ネットフリックスで韓国ドラマを一気見したりしますから、週末は徹夜をしたりするんです」
面識のない著者の献本に目を通し、面白ければ自ら連絡する。最近は、持続可能な世界を考えるSDGs関連の本に集中的に目を通す。関心を持つ多くの方と知り合い、ラジオ番組にゲスト出演してもらう。生島企画室に所属するドクター、文化人も多い。
経済アナリストの森永卓郎さん、メディアプロデューサーの残間里江子さん、生島の実弟でスポーツライターの生島淳さんらラジオのレギュラー出演陣も多種多彩なら、新しい出演者も生島によってアテンドされる。生島の“巻き込む力”が、ラジオ番組を分厚くしている。
「コスパがいいので、ほかの番組のお手本になっているみたいですね」
そう言う生島自身が、CM収録やナレーションをこなすこともある。ラジオショッピングでは試食はもちろん、スタジオ内でヘッドシャワーを頭に浴び、その使い勝手を伝える。ふだんから実践している鼻うがいのグッズを紹介する際は、実にお手のものだ。
「何でもすぐ試しちゃう」という生島の軽妙さに、リスナーは親近感を覚える。
スポンサー探しに生島がひと肌脱ぐケースもあるという。局側から見れば、企業からCMを獲得する広告代理店機能を有する生島は、まさにほかのラジオパーソナリティーにはない、余人をもって代えがたいしゃべり手なのである。
2018年11月30日、都内のホテルで生島企画室設立30周年パーティーが盛大に開催された。芸能界、放送界、政界から祝いに駆けつけた約1000人。まさに生島の“巻き込む力”を見せつけた形だ。
政治家の菅義偉官房長官(当時。現・総理大臣)が挨拶に立った。
2人の出会いは50年前にさかのぼる。法政大学時代、違う流派の空手部に所属する2人は、校舎の屋上で練習に汗を流していた。20代後半に、政治家秘書の知人を通じて再会し、交流が続いている。
「昨年3月に会ったとき、『総理に推されたらどうします?』って聞いたら『いやぁ、やんないよ。黒子的なほうがいい、支えるほうがいい』って言ってたんですけどね」
そんな同級生が今は総理大臣として、コロナ禍の日本のかじ取りに悪戦苦闘している。
「生島くん」と菅総理は呼ぶ。「スガちゃん」と生島は呼ぶが、総理になった後、呼び方に躊躇したことがあった。そのとき「スガちゃんでいいんじゃない」と総理に言われた。
「同級生だし、応援したい。昔から口下手っていうか滑らかな人じゃなかったんで、しゃべり方のレッスンをする?と本人にもメッセージしましたし、秘書の方にも送ったんですけど……」
と返事がないことを嘆く。
「政治やビジネスのトップに立つ人は、しゃべりのトレーニングはやったほうがいいですね。空手をやって腹筋を鍛えていたんだから、腹から声が出る。今からでも力強い発声法は身につきますよ」