見つめ直した「家族の時間」
毎朝90分の生放送が終わると翌日の打ち合わせを軽くすませ、それでおしまい。午前中は仮眠し、午後はほかの仕事やラジオのコーナー収録などをこなす。
週末は地方に講演に出かけるのがコロナ前の日常だったが、年間約150本あったという依頼はほぼなくなってしまった。最近は、リモートで講演会を手がけ、手ごたえも感じ始めている。
「ラジオをやっている自分には、リモートはアドバンテージ。お客さんの反応が直接見えないところでしゃべるのは案外合っています」
だが、会社の売り上げは減収。全体的に仕事の量は半分だという。
「前年比2割減でした。(講演がなくなり)土日がずっと休みというのはアナウンサーになって初めてなんで、最初は楽しかったんですけど……。改めて思うことは、自分自身は仕事人間なんだということですね。マグロみたく動いているほうが好きなんだってわかりました」
本を読む時間、映画を見る時間も増えた。睡眠時間も増え、ストレスの負担も少なくなった。もどかしいのは、人に会えないことだ。
「所属タレントを連れて営業に行けない、人と会えないのが寂しい。いろんな人と会っているのがエネルギーになるのに、それができない。講演会で地方にも行けない。移動できないのがつらい」
あらゆる密が制限される一方で、夫婦の距離感を見つめ直すいい機会になった、とプラス面も実感している。
「夫婦でこんなに一緒にいるのは珍しい。僕が健康でいられるのは、かみさんの手料理のおかげです。だけど、コロナで体重が5キロぐらい増えちゃって、品数を減らしてって言っているんです」
夫婦の間には、以前から共通の気がかりがあるという。
「息子たちが今後どうなるかですね。長男の勇輝さんは昨年9月から『仮面ライダーセイバー』にレギュラー出演し、次男の翔さんは俳優とダンスパフォーマンスをやっていますけど、彼らが仕事でこの先食っていけるのだろうかって悩んでいますね。好きなことで自分らしく仕事をやってほしい、と思いますけど、息子2人の行く末が夫婦の悩みのタネです」
そんな両親の悩みを、勇輝さんも実感しているという。
「母親にはよく『朝ドラ』に出てほしい、と言われます。早くかなえたいですね。僕自身がしっかりして、親の負担を減らすのがひとつ。結婚も考えています。家族で近所のそば店に行った帰りに、いつの間にか手をつないで歩いている両親を見ると、あんなふうになれるのなら結婚もいいかなと思います。
アメリカ時代、アンカーの仕事をやりたいと思った親父には、ラジオのあの空間があるのはすごくよかったなと思いますね。本当にやりたいことに近づける生き方をこれからもしてほしいですね」