コロナ禍では、シャンシャンの中国行きも差し迫っていた。シャンシャンの中国行きは、延長される前は、2020年12月末が期限だったのだ。旅立ちを前に、2020年10月2日から順次発売した記念商品のテーマは「Thank youシャンシャン」。シャンシャンの成長を見守ってくれた人たちに「ありがとう」を届けられる商品にした。
シャンシャンのグッズを販売し始めた頃は、幅広い年齢層をターゲットにしていた。学生でも買いやすい価格のノートやクリアファイルは、必ずラインナップに入れた。一方、「Thank youシャンシャン」グッズの購入者は大人を意識しており、従来のグッズよりも高品質で高価格の傾向がある。
写真が入ったスツールボックスをはじめ、グッズはおおむね好評だ。シャンシャンのグッズは、写真入りのほうが人気の傾向にある。写真入りのブランケットも大人気だ。
関係者の間では、動物園のグッズに写真を使うと、あまり売れないというのが常識だった。園内で撮影した写真を使うため、野生の迫力を表現できないことや、野生動物は眼光が鋭くて少し怖いグッズになることなどが理由だ。写真のグッズが売れたという点でも、シャンシャンは異例だ。
ギフトショップが狭い
シャンシャンが生まれてから約3年半の間に発売されたグッズの数は、1歳記念で30種類、2歳で23種類、3歳で17種類、「Thank youシャンシャン」で20種類。こうした記念商品とは別に、ブランケット、手袋などの季節商品や、クリアファイル、Tシャツといった定番商品もデザインを変えて発売してきた。
2020年12月時点で「パンダ」もしくは「シャンシャン」と名の付くグッズは179種類ある。総数は712種類なので、全体の約25%がパンダグッズということになる。
本来は、パンダだけ、シャンシャンだけを特別扱いするのではなく、多くの動物に興味を持ってもらえるように、上野動物園全体で800種類ほど販売することにしている。だが、シャンシャンのグッズが大量に売れるので、たくさん置く必要があり、全体の種類を減らしている。
また、そもそも上野動物園のギフトショップは、ディズニーランドや、パンダがいるアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)などと比べ、販売スペースが圧倒的に狭い。グッズの多くを屋外で販売しているありさまだ。
これには事情がある。都立施設の上野動物園は、都市公園である上野恩賜公園に位置する。そのため、都が「都市公園法」を基に「東京都立公園条例」で定めた建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の比率)が適用されてしまうのだ。なお、同じ上野動物園内でも、動物がいる場所は、特例として建ぺい率が緩和(上乗せ)されている。