大阪で開催された『ISU世界フィギュアスケート国別対抗戦2021』で、羽生結弦選手が力強い演技を見せた。

「男女シングル、ペア、アイスダンスの選手がチームとなり、国別に順位を競う2年に1度の大会です。羽生選手は前回欠場していますから、4年ぶりの出場になりました」(スポーツ紙記者)

 個人戦ではなく団体で戦う大会で、スポーツライターの折山淑美さんは、羽生選手にはチームを引っ張る役割が期待されていたと話す。

「国別対抗戦はみんなで楽しむ“お祭り”のような大会。羽生選手の存在は、チームに安心感を与えているでしょう。羽生選手がいることで、ほかの選手はのびのび演技ができると思います。いるだけで大きな力を与える存在。本人は“みんなついてきて!”とは言いませんが、自然とそういう空気ができています」

 チームを組んだほかの選手たちは、羽生に強い信頼を寄せている。

宇野昌磨選手は、昨年の全日本選手権の会見で羽生選手のことを“僕にとっての最終目標”だと話していました。紀平梨花選手は羽生選手のビデオを見てジャンプの研究をしているそうです。後輩たちにとって、羽生選手は憧れの存在ですね」(前出・スポーツ紙記者)

最後の国別対抗戦になる可能性も

 フィギュアスケート評論家の佐野稔さんは、羽生選手自身も、高いモチベーションで大会に臨んだと考える。

「次の開催が2年後だと考えると、羽生選手にとっては最後の国別対抗戦になる可能性もあるでしょう。オリンピックを2連覇し、誰しもが目標にする選手。今までそんな選手はいなかった、いわばレジェンドです。“みなさんにポジティブに感じてもらえるように、自分自身ができることは何なんだろう”と考えているのだと思います」

 東日本大震災で被災した羽生に練習場所を提供していた『テクノルアイスパーク八戸』館長の坂本久直さんは、羽生選手がリベンジに燃えていたはずだと話す。

「3月の世界選手権ではネイサン・チェン選手が完璧な演技を披露しました。羽生選手も、今の限界を出し切りましたが、満足いくまで練習できなかったことは大きなストレスだったでしょう。チャレンジャーな性格ですから、国別対抗戦は闘志メラメラですよね。ただ、今の状態は彼自身がいちばんよくわかっていると思います」

 コロナ禍で環境が激変する中で、羽生には心境の変化があった。4回転半ジャンプへの思いを強めたのだ。