行政書士・ファイナンシャルプランナーをしながら男女問題研究家としてトラブル相談を受けている露木幸彦さん。今回は医師である夫の不倫に悩む女性の実例を紹介します。
やめたいけれど、続けなくてはいけない夫婦関係
突然ですが、質問です。嫌な人間との付き合いが続くくらいなら、いっそのこと、やめてしまいたい……そう思ったことはありませんか? 特に自分より相手のほうに問題がある場合は尚更です。これはどんな人間関係でも一緒。やめ方より続け方のほうがはるかに難しい。
まず続け方ですが、何度も何度も話し合い、傷つけ合いながら、亀裂を埋め尽くそうと努力しなければなりません。しかし、2人の仲が元に戻る保証はどこにもありません。結局、徒労に終わるかもしれないと心配しながら頑張るのは億劫です。
一方、やめ方ですが、例えば職場の上司や、地元の旧友、SNSの友達の場合は退職願いを提出したり、同窓会に顔を出すのをやめたり、電話は着信拒否、メールは受信拒否、LINEはブロックすればいいので簡単です。後日、「あいつはひどいやつだった」と吹聴されるかもしれません。しかし、もし相手と完全に縁を切るのなら、何を言われようが知ったことではありません。
とはいえ、やめたくてもやめられない。続けるしかない場合もあります。例えば、血のつながった家族。例えば、親や兄弟姉妹、子どもであることを「やめたいからやめる」のは無理です。それでも血縁がもたらす共通点が尾を引き、なんだかんだで付き合いが続く。それが「腐れ縁」と呼ばれる所以です。
今回、取り上げたいのは「血のつながらない家族」です。例えば、夫婦の場合はどうでしょうか? 結婚する前は他人だった2人の間にトラブルが勃発したら……。結婚生活を続けるか、やめるかを迷うときに聞こえてくるのは「離婚しちゃったほうが楽なんじゃ」という悪魔の囁き。
しかし、経済力の弱い女性の場合、「嫌いだから別れる」という単純明快な一本道ではありません。例えば、子どもがまだ小さい、お金の不安がある、そして親に合わせる顔がない──このような理由で「やめたいけれど、続ける」という判断をせざるをえない場合があります。行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談を行っていますが、今回の相談者・佳乃さん(36歳)もその1人。親の紹介で結婚した夫(42歳)の不倫が発覚し、専業主婦で4歳の娘さんを抱える彼女は人生の岐路に立たされていたのです。
「男の人ってみんな同じなんですね……」
筆者の事務所へ相談しに来た佳乃さんはそう嘆きますが、佳乃さんの父も夫とよく似たタイプ。父の不倫に苦しむ母の背中を見てきました。それでも佳乃さんの両親は今でも結婚生活を続けています。「それでも私は主人のことを今でも信じています」と佳乃さんは言いますが、母の姿を自分に重ね合わせているかのようでした。
佳乃さんは父が経営する内科クリニックを手伝っていましたが、父の紹介で知り合ったのが夫。夫は別の総合病院に勤めており、人柄がいい内科医という評判でした。将来的には実家のクリニックを継いでくれる相手と結婚してほしい。そんな父からのプレッシャーを佳乃さんは長年、感じていたそうです。