始めたきっかけはフジテレビ系列で当時、放送されていた朝の情報番組内で、「変わったことをする女性」を紹介するコーナーのコンテストを受けたことだった。
「1等はハワイ旅行。特技だった回文(上からも下からも同じ言葉で読める文のこと)で参加したの」
しかし、“テレビ映えがしない”との理由から落選。だが番組の担当者から、
「“音楽の先生なら、回文と音楽とミックスして、逆回転で歌えないんですか?”と言われたんです」
そこで一念発起し、必死で練習して「逆さ歌」を編み出した。結果は優勝。それ以来、多数のテレビ番組にも出演してきた。
「ソロ活」は「終活」のひとつ
そんな中田さんはこの『逆さ歌』でユーチューバーデビュー。自作した逆さ歌を自身のユーチューブチャンネルにアップするなど、若者顔負けの「ソロ活」を楽しんでいる。
「動画のアップロードを知り合いに手伝ってもらいながら’15年、83歳からユーチューブを始めました」
チャンネル登録者数は7000人を超え、逆さ歌はこれまでに58曲をアップした。
選曲はAdoの『うっせえわ』や、LiSAの『紅蓮華』など子どもたちにも人気の曲も多く、59曲目は「Siri」に教えてもらった優里の『ドライフラワー』を選んだ。
若者を中心に流行している曲の逆さ歌に積極的にチャレンジすることには理由がある。
「知っている歌ならすぐに作れるけど、新しい歌は時間がかかる。それをまだ身体が動いて頭が回るうちにやっておきたい。頭がボーッとしてきたら、昔の歌をやって、100曲歌い終わったら死にたいと思ってるの」
中田さんの「ソロ活」は「終活」のひとつでもあるのだ。
そんな彼女は夫を約20年前に亡くした。失意の中にいたとき支えになったのは家族とソロ活だった。
これまでに行った「ソロ活」は、例えば60代でひとりで米・テキサス州へと海外旅行。当時習っていた英会話を駆使して、ホテル探しから予約まで自らこなした。
ほかにも小説やエッセイの執筆、裁縫や料理などひとりの時間を謳歌している。
「好奇心が強すぎるのかもね」
と笑う中田さんにとってソロ活は、「自分が生きていることの証明」だという。
夫や子ども、家庭のことに追われることが多い女性たちに伝えたいことがある。
「60歳になったら女として生きられる。60歳からの人生が本当のあなたの人生、1日1日を大切に生きてね」