'19年4月、乗用車が暴走して通行人を次々とはね、松永真菜さん(当時31歳)と長女・莉子ちゃん(当時3歳)の2人が死亡し、9人が重軽傷を負った「池袋暴走事故」。4月27日、東京地裁で飯塚幸三被告に対する被告人質問が行われた。加害者家族をサポートするNPO法人『World Open Heart』の理事長・阿部恭子さんの元に、飯塚被告の家族から電話があったのは、事故後の 2019年4月下旬のこと。その後も家族からの相談を受け、初公判から傍聴を続けてきた。そんな阿部さんの目に映る、被告人の姿とはーー。
被告人質問に突入
4月27日、「池袋暴走事故」で自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた飯塚幸三被告の7回目の公判が、東京地裁で開かれた。これまで被告人は車の故障による事故だったとして過失を否定してきたが、弁護側は証人を出すこともないまま被告人質問に突入した。
車イスで証言台に着いた被告人は、「1965年に運転免許を取得し、運転歴は53年以上」で、日常的に車を運転していたと述べた。2018年春ごろから、つまずいて転ぶことがあり杖を使うようになったという。
また、2017年の夏ごろには医師の診断を受けたと話し、それからしばらくして「パーキンソン症候群の疑いがある」と言われたことを供述。そのとき、車の運転については「体調が悪ければやめるように」という指示だけであったことも明かしている。
さらに事故当日については、被告人は妻と車でレストランに向かっていたところ、エンジンが高速回転し、“意図しない加速”が起きて「制御不能でパニック」になったと主張。弁護側からの質問の最後には、「記憶に正直に答えているが、結果は重く受け止める」と述べた。
事故から2年、飯塚被告が何を考えてきたのか、自らの言葉で語られることを期待した人も少なくはないだろう。しかし、刑事裁判がそのような期待に応える機会になるかといえば、必ずしもそうではない。筆者は、第1回公判から傍聴を続けているが、今回も非常に虚しさを感じて法廷を出た。