「過度な押しつけや教育虐待を防ぐには、1人の人間として子どもにも人権があることを理解してください。『あなたのためを思って』という道徳心は、子どもの尊厳を傷つけ、その子がその子らしく学ぶ権利を侵害することがあります。

 ほとんどの親は、子どもの教育についての判断を見誤るもので、それは恥ずべきことでも過ちでもありません。自分の子どもに合っていない教育をしているかもしれない、と思ったら、すぐに軌道修正をしてください」

 親の自分がやってきたことが正しい、よいことだと思い込んで「これをやりなさい」と押しつけてしまうのは危険である、としっかり認識しなくてはいけない。

結果をすぐに求めすぎていませんか?

 数字で結果が出て、成長していると効果が見えやすい「認知能力」で子どもの能力を見極めようとしてしまいがちだが、最近の幼児教育では、やり抜く力や集中力、自立心や協調性、自己肯定感といった、IQや偏差値、テストなどでは測れない「非認知能力」を育むことが重要視されている。

「ただ非認知能力は少々誤解を受けていて、『どうしたら非認知能力を鍛えることができるか?』という発想になっている教育もあるんです。非認知=捉えられないものであり、認知能力と非認知能力は分けられるものではないのに、読み書きや計算といった認知能力と同様に鍛えられると思っているんですね。非認知能力について僕は、複数の認知能力を連動して効率的に力を発揮させる能力のことではないかと考えています。

数字で結果が出る「認知能力」だけで子どもの能力を見極めるのは危険(写真はイメージです)
数字で結果が出る「認知能力」だけで子どもの能力を見極めるのは危険(写真はイメージです)
【写真】早期英才教育を受け、才能を開花させた本田姉妹

 つまり個別の認知能力が高くても、それらを結びつける非認知能力が備わっていなければ、筆記テストでいい点は取れるかもしれないけれど、実生活の中で能力を応用して使うことができないんです。しかしある部分の認知能力が抜群に優れていて、突出した才能を開花させる人もいるので、非認知能力が低いからといってダメとは言えないんです」

子どもをスマホのアプリだと思っていませんか?

 昔の教育を受けてきた親世代は、いろんなことをバランスよく身につけていることがいいと考えがちで、英会話に読み書き、算数、直感力や記憶力の鍛錬に、ピアノにお絵かきに各種スポーツ……◯歳までにやらないと身につかないと言われ、あれもこれもと子どもにやらせがち。しかしおおたさんは「それは使うかどうかもわからないのに、スマホにアプリをどんどんインストールしているようなもの」と注意を促す。

「無理にたくさんのアプリをインストールしても、スマホ自体の性能が悪ければたくさん入りませんし、動きも鈍くなります。それよりもスマホそのものの性能を上げることが大事で、時代が変わって価値観がアップデートされたら最新のアプリをインストールできるよう力をつけておくことが重要なんです」