自律神経が乱れる原因は……

 自律神経が乱れる原因には、いろいろな要素が挙げられる。

「自律神経は、ストレスや感情による影響を知らず知らずのうちに受けてしまう神経です。また、今はコロナ禍で運動不足の方が増えているといわれていますが、その結果、自律神経が乱れて過活動膀胱になる人が増えることも懸念されます」

 堀田先生いわく、膀胱は自律神経に関する不調が出やすい部分なのだという。

「血圧が高くても低くても本人には自覚がないように、基本的に自律神経の働きは意識にはのぼりません。しかし、人は1日に何度も排尿をするため、膀胱に関する自律神経はいちばん、意識にのぼりやすい部分です。そのため、何か問題が生じると過活動膀胱などの症状として現れやすいんです

 ただ、これらは骨盤底筋を鍛えるなど、セルフケアで改善することがあります。近年実験で効果が立証されている下記の“会陰さすり”などで改善する人もいます。まずは取り入れてみて」

その日の夜から効果が出る!? 「会陰さすり」を試そう

 会陰さすりは、肛門と生殖器の間にある『会陰部』を指か専用のローラーで約1分間やさしくさする方法。それによって、次のような効果が期待できるという。

「会陰さすりで会陰部をやさしく刺激すると、その刺激が仙髄に伝わります。仙髄とは脊髄にあり膀胱の筋肉をコントロールする自律神経が通る場所。自律神経の膀胱への刺激が遮断され、過剰な収縮が抑えられます」

 実際、堀田先生らの研究参加者の中にはその日のうちに効果が現れた人も少なくない。

「過活動膀胱が原因の夜間頻尿は、早ければその日の夜から改善される可能性もあります」

 会陰さすりは即効性がある方法だが、気をつけるべきポイントも。

「会陰部を強く刺激すると逆効果になってしまうので、やさしくさすることが大切です。また、お風呂など皮膚が濡れる場所では感触が変わる可能性があるので避けたほうがいいでしょう。夜間頻尿の改善には就寝前に行うのがおすすめです」

1.トイレなどで生殖器と肛門の間を指で左右にさする。

2.片道3秒の速さで、指がかすかにふれる程度のやさしい力で往復10回さする。これを1日に最低1セット行う。

※ローラーによる会陰さすりの臨床研究論文は下記
Iimura, K. et al., PLOS ONE, 2016

教えてくれたのは……堀田晴美先生●東京都健康長寿医療センター研究所 自律神経機能研究室研究部長。日本自律神経学会理事。自律神経系の活動をコントロールする方法を長年にわたり研究している。共著『夜間頻尿 朝までぐっすり! 自宅ケアBOOK』(主婦と生活社)がある。
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【写真】夜2回以上トイレに行く人と死亡率のグラフ

(取材・文/熊谷あづさ)