「暇があると不安になるので、暇を作らないようにしている」と青木さやか
「暇があると不安になるので、暇を作らないようにしている」と青木さやか
【写真】多くの苦しみを経験しつつも、青木さやかの表情はこんなにも晴れやかに!

――励まそうとしてくれたのかもしれないですけどね。

青木:結局、誰に何を言われても安心につながらなかったのは、こちらに余裕がないからですよ。自分がいっぱいいっぱいだと、ちょっと嫌なことを言われただけでも、すぐにへこんだり対立したりするけれども、余裕さえあれば全部、受け入れられるでしょ。病気になって余裕がないから相手を受け入れられない状況になってしまった、という感じです。

――手術は大変でしたか?

青木:人によると思うんですけど、私の場合、手術自体は4、5時間だったかな。前日に入院して、肺にカメラを入れて、どこを切り取るかをお医者さんがチェックする。当日は手術室に入って、麻酔をして寝ている状態なので、全然覚えていないです。起きたらICU(集中治療室)にいるっていう感じ。

 麻酔薬のせいか、吐き気と熱でつらかったです。2、3日は起きることができなかったんですけど、しばらくすると歩けるようになりました。1週間くらい入院していましたね。

「でも」という言葉がストレスの原因に

――がんになって何がつらかったですか?

青木:生活面で特につらいのは、仕事ができない時期があることですね。娘がいるし、家賃やいろいろな維持費もあるし、金銭的なことをすごく考えました。しかも、どれくらいで仕事に戻ってこられるかわからない。同じパフォーマンスができるのかもすごく心配。舞台とかドラマとか、今後の仕事を入れるかどうかを自分で判断しなければならないストレスがありました。

――がんの恐怖をどうやって乗り越えたんですか? 

青木:乗り越えるというか、つらいな、つらいな、怖いな、つらいな、苦しいな……と思いながら、ずっと暮らしていた感じでしたよ。遊んでいても何も楽しくなかったし、気を紛らわせるということも、私にとってはすごく難しかったですね。ネットで検索して出てくる、同じ病気の方の闘病記なども、私を励ましてくれるものではなかった。

 けれど「がんは怖い」とか「がんになったらこうだ」みたいな固定観念を、できるだけなくそうと努力しました。友人の武司さんに言われて印象的だったのが「いろんな人の話を“はい、わかりました”って素直に聞いていたら楽になるよ」というひと言で。ちょっとやってみようかなと思って、そこからすごく変わりました。たとえ私の意見のほうが正しいと思っても、「でも」という言葉を使わなくなりました。

――「でも」って、めちゃくちゃ使ってしまいます。

青木:「でも」って言うと、続けて自分の意見を言わなければならないし、(時には)人と対立することになって、それが大変なストレスだったと今は思います。逆に「はい、わかりました」と言うようになってからは、人間関係ストレスはほとんどなくなりました。相手の思い通りに動くことになるので、すべてうまくいくような気がしています。

――「わかりました」と発したことによって、(例えば、仕事で作りあげるものなどが)自分が思っていたよりクオリティが低かったとしても、それは受け入れられるんですか? 

青木:私のこだわりなんて、すごくちっぽけだと思うようになりました。結果的に、自分のこだわりを捨てて完成した作品のクオリティが下がったかというと、下がっていない気がする。こだわりを持って誰かと対立していたことがストレスになって、病気の原因のひとつになっていたかもしれないと思います。