事故を目撃したBくんは自分を責めていて…

「自分が“走る凶器”を操っているんだという認識がまったくないのが腹立たしいです」

 そう憤るのは、被害者Aくんの同級生Bくんの母親だ。事故当日、AくんとBくんはふたりで外出していた。

「家から8kmほど離れた商業施設『マリゾン』に自転で遊びに行っていました。夜になるとライトアップされて、とてもキレイなんです」(Bくんの母親、以下同)

 彼らはいつも5、6人の友だちグループで行動していたがその日は、ほかの子たちは部活で忙しかったため、2人きりだった。

 その帰り道で、彼らは事故に巻き込まれてしまう。Bくんの目の前で、Aくんは容疑者のに引かれて、15mほど跳ね飛ばされた──。警察からの連絡を受けて、Bくんの母親が事故現場に駆け付けると、

「息子はパトカーの中でガタガタと震えていました……。目の前で起きたことが怖かったんだと思います」

 さらにBくんは事故に責任を感じていて、

「Aくんと息子は一緒に道を横断しようとしたんです。そこに容疑者のが突っ込んできて、Aくんだけが事故に巻き込まれしまった。だから“僕のせいなんじゃないか”って自分を責めていて……」

 事故現場は、横断歩道のない交差点。AくんとBくんが横断した道は、確かにスピードが出やすく、見通しも悪い。だが、容疑者のは、制限速度の2倍、時速100km近くのスピードを出していた。

事故現場の献花
事故現場の献花

 その後、BくんはPTSD(外傷後ストレス障害)のような症状に陥ってしまう。

「本当に一瞬の出来事だったので、当時の詳しい様子は覚えていないようです。こちらも、あえてそのことは聞かないようにしています。ときどき、修学旅行のときの写真をジーッと見つめています。Aくんのことを思い出したりしているみたい。大きな心の傷にならないか心配で……」

 そんなBくんに母親が「病院へ行こうか?」と声をかけると──、

「“病気扱いするなよ!”と口では強気に振る舞っていますね。だから、その気持ちをくんで様子を見ています。母親としては、きちんとご飯を食べさせて、きちんと寝かせてあげることしかできないんです」(同)

空手道場に通って頑張っていたAくん

 AくんとBくんは、同じクラスになったことはなかったという。

「2年前に引っ越ししてきたんですが、うちの子は引っ込み思案で“友だちができない”と嘆いていたんです。そんなときに声をかけてくれたのが、Aくんでした。とても優しくて、いい子でね。それで息子の友だちの輪が一気に広がった感じでした」(同)

 ほかの同級生たちも、

「Aくんは学校の部活には入っていないけど、空手道場に通っていて、とても頑張っている子でした」

 と評した。