文部科学省が2020年に発表した統計によると、全国の小中高校などで認知されたいじめは61万2496件で、6年連続の増加。'13年度に集計が始まって以来、過去最多となった。
「ここ数年、いじめが低年齢化する傾向にあります。かつては考えられなかったような巧妙なケースも目立ちます」
そう語るのは、いじめの調査や被害者支援を行うNPO法人『ユース・ガーディアン』代表の阿部泰尚さん。本職である探偵業と並行しつつ、これまでに6000件を超えるいじめの相談を受け、解決に導いてきた。そうした経緯から阿部さんを「いじめ探偵」と呼ぶ人もいる。
“情報操作型”のいじめが増加
前出の調査で、いじめの増えた割合が前年比で最も大きかったのは、小学校だ。
「私たちが受けている相談では、“あの子と一緒にいると嫌われる”“裏で悪口を言っていたよ”などと理不尽な噂を流して友人関係を壊し、被害者を孤立させるタイプのいじめが増えていますね。こうした情報操作型のいじめは、かつては小学校高学年や中学生の間でよくみられるものでしたが、最近は低学年でも目立つようになっています」
学校や学級内での立ち位置や力関係といった「スクールカースト」を利用する、支配型のいじめも小学校のうちから起きている。
「情報操作型や支配型のいじめを見ていると、加害者の親たちも、子どもと同様に親同士の間でいじめを行っていることも少なくない。さらにはママ友間での序列など、親の力関係が子ども同士にも影響を及ぼすことがあります」
また、SNSやソーシャルゲームを通した、親の目が届きにくい場所で起こるいじめも増加傾向にある。
「前出の統計によれば、5年前と比べ2・3倍に増えています。なかでも、24時間経過すると自動的に消える『インスタグラム』のストーリー機能を使って、証拠が残りづらいいじめが増えているのが特徴。露骨な表現ではなく隠語を使って、仲間内で攻撃するケースも少なくありません」
多様化するいじめに親はどう立ち向かい、どのようにしてわが子を守ればいいのだろうか? いじめの傾向や特徴をつかみ、阿部さんと対策を考えていこう。