浮気相手の男に夫が直談判した結果

 妻の浮気というショッキングな事実を突きつけられた政彦さんですが、次に向かった先は、なんと美紀さんの浮気相手のもとでした。

「証拠をもとに、慰謝料を請求しました。僕が“裁判をしますよ”と言ったところ、相手の男は青ざめて、すぐに“示談にしてくれ”と。裁判で大事になって、職場や家族にバレたくないと考えたようです。年齢を聞くと、まだ彼は32歳、独身でしたが、今後のキャリアを考えると示談は当然の判断だといえます。彼としては、ほんの出来心だったようですが、そこに本気になって離婚を言い出す妻も、浅はかですよね(苦笑)」

 政彦さんが手にした慰謝料は、200万円。一般的に、慰謝料の相場と言われている額です。

 示談交渉の場に何度も立ち会ったことのある岡田さんは、こう話します。

「直談判は修羅場ですが、不倫相手に“いつどこで出会ったのか”“今後どうしていきたいのか”など、本当に知りたいことを聞ける場です。不都合な真実を目の当たりにするのはしんどいですが、ここで納得が行くまで話し合うことで、すぐに次のステップに踏み出せるというメリットもありますね」

 妻の不貞を知った際、政彦さんは、すぐに妻を問い詰めようとしたようですが、あえてそうしなかった理由を次のように明かしてくれました。

「実は探偵事務所の担当者から、『待った』がかかったんです。離婚をしないとあらかじめ決めているのなら、“どういう手段が有効なのか、一緒に考えましょう”と言われて、はじめて冷静になりましたね。ヘタに問い詰めて、妻が逆ギレした結果、“今すぐ離婚する!”とも言い出しかねません。また夫婦間にトラブルがあっても、子どもに愚痴を聞かせてはいけないというアドバイスもありがたかったですね」

夫婦は日常生活を取り戻した

 直談判の後、間男はすぐに仕事を辞め、美紀さんの前からも姿を消しました。美紀さんもやがて家に戻り、はじめこそギクシャクしたものの、離婚の二文字を口にすることはなくなり、それまでどおりの日常生活を取り戻したといいます。

 もちろん美紀さんは、政彦さんが浮気の事実を突きつめ、浮気相手だった男性から慰謝料を請求していたことは、とうてい知る由もありません。

 その後、政彦さんに話を聞くと、笑いながらこんな話をしてくれました。

「家の中で、妻が女友達と電話をしながら“もう彼から連絡が来ないの〜!”と楽しそうに愚痴っていました。妻の脇が甘いのは、自分の火遊びだけはバレない、という絶対の自信があるからでしょうね(笑)」

 最後に。息子さんのためとはいえ、なぜ政彦さんは、不貞の妻を許せたのでしょうか?

「いやあ、僕も人のこと言えないんですよね。まだ息子が小さいころ、キャバクラにハマったり、火遊びをしていた時期もありましたからね……。そのことは、妻にはバレずに終わりましたが、結局、似た者夫婦なんですかね。今回の慰謝料の200万円はまるごと、僕の趣味のバイクに使わせてもらいますけど(笑)」

 愛のカタチは、夫婦の数だけ。長い人生においては、互いの「スネの傷」をあえて責め立てず、関係を続けていく。そんな選択肢もアリなのかもしれません。

※プライバシーを守るため、実際の事例を一部変更、再構成しています。

《取材・文/アケミン》