沢口は東宝シンデレラとして世に出て、映画『竹取物語』にも主演。阿部は王子様にはなれず、かぐや姫に求婚して失敗する貴公子のようになってしまったわけだ。
それどころか、仕事も減少。ほかの女優と共演するたび「新しい愛」「三角関係」などと書かれたからだ。仕事を「干され」た阿部は「役者人生最初の試練」と振り返っている。
不遇の時代を乗り越えた先に……
もっとも、これが役者として大成していく転機ともなった。つかこうへいの舞台などでクセの強い役に挑戦。この姿勢が演技派としての評価をもたらしていく。濃すぎる顔と189cmの長身を活かして古代ローマ人になりきった映画『テルマエ・ロマエ』は、その最大のたまものだ。
また、熱愛報道のトラウマから恋に及び腰となったせいで婚期が遅れ、そこがドラマ『結婚できない男』(フジテレビ系)につながった。スキャンダルをちゃんと肥やしにできたのである。
ところで、筆者は阿部と同い年。大学で同じサークルだった女子に彼の幼なじみがいて、こんな話をしてくれた。
「牛乳の一気飲みが得意だったんだよね」
それもそのはず、阿部は牛乳が大好きだ。4月に出演した『中居正広のキンスマSP』(TBS系)でも、背が高くなった理由を聞かれ「高校生までずっと、水を飲まないで牛乳ばっかり飲んでました」と答えていた。
『ドラゴン桜』を見て東大に行けるかはさておき、牛乳を飲めば背が高くなるというのは本当なのかもしれない。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。