JOCはどんな形であれ透明性を示すべき

 組織の隠ぺいに関わって、良心の呵責に苛まれる。実直な人ほど、精神的に追い込まれてしまうもの。

 Aさんは、どんな人物だったのだろうか──。

 埼玉県の指折りの県立進学高校から法政大学を経て、西武鉄道グループの不動産会社であるコクドに入社した。JOCには当初、コクドからの出向だったが、その後JOC専任となった。

「Aさんは10年ほど前に一戸建ての自宅を購入。1階でピアノ教室をやっている奥さん、20歳を越えた2人の娘さんの4人で暮らしていました」(近所の住民)

 毎朝、スーツ姿に帽子をかぶり、いかにも事務職らしい小型のバッグを持って通勤していたAさん。

「背が高くて、いつも颯爽と歩いていてカッコよかったですよ。顔はいかにもまじめそうで、きっちりとした方なんだろうと思っていました」(同・近所の住民)

 自分に誠実であろうとしたAさんにとって、最終的な選択肢は“死”しかなかったのかもしれない。

'13年、2020年東京五輪開催決定の『都民報告会』では、くす玉が割られた。このころは都民も歓迎ムードだった
'13年、2020年東京五輪開催決定の『都民報告会』では、くす玉が割られた。このころは都民も歓迎ムードだった
【写真】Aさんが飛び込み自殺を図った『中延駅』ホーム

 玉木さんは、語気を強めてこう話す。

「JOCという組織はどんな形であれ、透明性を示すべきです。マスコミも五輪のバックにいるスポンサーや広告代理店に気兼ねせずに、徹底追及してほしい!」

 前出のイベント関係者も、

「今は五輪開催を疑問視する声も多いですが、いざ始まったらわかりません。日本人選手がメダルをとったら、国民のボルテージが一気に上がって、この事件のことなんて忘れ去られてしまうんじゃないかな」

 準備してきた晴れの一大イベントを見ることなく、天国へ旅立たれたAさん。彼のためにも、真相究明の手を緩めてはいけないのだ。