自分でおむつをしてみて初めてわかることも
綾菜 いろんな制度があっても、知らなくて使っていない人もたくさんいますものね。
安藤さんは、介護する人にはどんなことが必要だと思いますか?
安藤 介護される人は十人十色。みんな違いますから、相手が今、何を望んでいるのかいないのかをくみ取る力が必要ではないでしょうか。経験を積むしかないですよね。
綾菜 わかります。一度実習で、おむつ替えをしたとき、どうすれば上手にできるかばかり考えていて、やってもらう人の気持ちを想像する余裕がなかったんです。それを注意されて、自分も1日、おむつをつけて過ごしてみたら、全然、出なくて……。そのとき初めて、おむつを替えてもらう側の気持ちが少しわかったように思いました。
安藤 私も同じ経験がありますが、やっぱり出なかったです。排泄ってやはりものすご~く羞恥心が伴うものなんですよね。その羞恥心の程度もまた、人によって違うし、なかなか難しいです。
綾菜 でも、これだけ高齢者も増えて、ますます介護が必要になるのに、介護に携わる人が減っているように思うんです。私が一緒に授業を受けた若者たちもみんな介護職を辞めてしまいました。
安藤 やっぱりお給料が安いからでしょうね。誰だって自分の生活があり、そこがまったく満たされないのに天使のような笑顔で頑張れと言われても無理ですよ。
綾菜 私もこういう機会に「介護って素晴らしい。やりがいがあります」って発信していきたいのですが、介護を本職にして生活する大変さを考えると、うかつなことも言えなくて悩みます。介護の仕事に就く人が、もう少し将来に希望を抱けるしくみがあればいいですよね。私たちの世代が介護される側になるころには、老人施設に入居することも今より難しくなるんじゃないですかね。
安藤 絶対にそうだと思います。給料が安いうえに、将来に夢を持てず、体力的にもキツい。それでは誰もやりたくならないですよ。私も、精神的にキツいと思ったことはないけど、腰痛には悩まされました。もっとリフト機器の導入が進んでいれば、と思うんですけどね。日本は介護のテクノロジー導入も遅れていると聞きます。
綾菜 そうですよね。機器の導入が進めば、介護者が腰を痛めるとか、身体に無理をするということも減りそうです。私たちひとりひとりが声を上げていくことが大事ですよね。コロナが収束したらすぐにでも介護の仕事に就きたい私にアドバイスがあれば!
安藤 偉そうなことは言えませんが、でも、大変なことがあっても“忍耐で!”とか思わないほうがいいかも。忍耐だと思った時点で、その仕事はしたくないってことなので。最初からあまり構えないで、平常心で自分らしく取り組むのがいちばんですよ。
綾菜 知識や経験は足りなくても、笑顔で明るくやれば何とかなりますよね!? 今日はありがとうございました。頑張ります!
かとう・あやな●1988年4月12日生まれ。2011年に加藤茶と結婚し、45歳の年の差婚で注目を集めた。夫を支えるため介護を勉強。「介護職員初任者研修」(旧ホームヘルパー2級)、「介護福祉士実務者研修」(旧ホームヘルパー1級)を取得。TWIN PLANET所属。
あんどう・なつ●1981年1月31日生まれ。介護歴は20年以上。'12年、カズレーザーと『メイプル超合金』を結成し『M-1グランプリ』などで注目を集め大ブレイク。'19年11月22日には自身のブログで、年下で介護職に従事する一般男性との結婚を発表した。
《取材・文/中村裕美(羊カンパニー)》