「被告に心を踏みにじられた。裁判所には重い実刑判決を望みます」
亡くなった2人の命がいかに尊く、かけがえのないものかを思い知らされた公判だった──。
傍聴席から発せられた言葉
開廷から1時間45分が過ぎ、いったん10分の休憩。それから、検察の論告求刑が始まった。そこからおよそ40分が経過したときだった。傍聴席の中から、
「飯塚さん、寝てんじゃないよ!」
中年男性の図太い声があがった。法廷の中は一瞬、シーンと静まりかえる。この公判中に、傍聴席から声があがったのは「人殺し……」に続いて、2回目である。
裁判長がすかさず、
「静かにしてください」
と制した。
確かに、飯塚被告は寝ているかのように、うつむいていた……。
最初はやや顔を伏せて、上目使いで遺族の意見陳述を聴いていたが、時間が経つにつれて次第に視線が落ちていった。その前にも2、3度、寝ていると疑われても仕方のないような場面があった。
「最後に何か言いたいことは?」
飯塚被告は裁判長に促されると、
「被害者遺族の気持ちを思うと、心苦しい限りです。しかし、アクセルとブレーキを踏み間違えたことは、まったくございません。いまも、そう思っております。
結果論ですが、もう少し早く運転をやめておけばと反省しております」
被害者遺族の感情を逆なでする発言で、この公判は締めくくられた。判決は、9月2日に下る。