弁護側の証言は弁護人と被告だけで、別の証人を立てたことは一度もなかったという。たとえ飯塚被告が控訴したとしても、
「二審の高裁の判断は、一審の判決がベースになります。一審で疑いようのない有罪の判決が出ると、それを覆すような証拠があるかどうかが大きな判断基準になる。これまでの公判を見る限り、飯塚被告は圧倒的不利な状態で、二審に臨むことになるでしょう」(同・高山弁護士、以下同)
では、被告は9月2日の判決で求刑を受け入れるのだろうか――。
人生の“期限”が迫っている
「被告はいまだに“踏み間違いはない”と無罪を主張していて、検察の見解をまったく受け入れようとしていない。“プリウスの電気系統や、経年劣化によって何らかの不具合が生じた”と最後まで車のせいだと言っていますから、その主張が認められないとなるとかなりの確率で控訴するでしょうね」
交通事故裁判の場合、9月に控訴すると、11月か12月には開廷。おおよそ1、2回の裁判で再び判決が下るそうだ。それでも被告は納得できず、上告するとなると……。
「有罪を覆すような新たな証拠があること、憲法に抵触する部分があることが上告の条件ですが、そこは弁護人がなんとかするでしょう」
たとえ最高裁まで持ち込まれても、早ければ来年の半ばまでには判決が出るというが、
「レアケースですが、事故の発生から最高裁の判決まで、14年もかかった交通事故裁判もあることはある」
飯塚被告に当てはめてみると、判決が出るころには彼は102歳だ。そこまでかからないとしても、現在90歳の飯塚被告には、時間の猶予がないことは確かだ。
「刑務所に入ってほしい」
被害者遺族の悲願は、命のタイムリミットに打ち砕かれてしまうのだろうか――。