本人も家族もラクになる!
「気持ちに寄り添う認知症介護」実例集
認知症の人の世界とは? よりよい接し方とは? 川畑さんの著書から具体的な実例を紹介します。
[極意1]不安な気持ちを想像してみる
■本人にとってはいつも初めての質問
認知症の代表的な初期症状のひとつが「短期記憶」が低下すること。
年をとれば、もの忘れが多くなるものだが、認知症の場合は、ほんの数分前のことが記憶から抜け落ちてしまうのだ。
「何度も同じ質問をされると、答えるほうは、どうしてもイライラしてきますよね。でも、本人にとっては毎回初めての質問。もの忘れで失敗が増えたという不安もありますから、なおさら、“確認しなくちゃ”と焦り、余計に何度も聞いてしまうのです」
このように不安な気持ちでいるときに、責められたり無視されたりしたら? 本人の気持ちになれば、不満や不信を感じるのは当然だとわかってくるだろう。
■不安を安心に変えるコミュニケーションを!
川畑さんは、このような認知症の人の不安が安心に変わるように接すれば、認知症の悪化予防につながるという。
認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状」に大きく分けられる。中核症状は、記憶障害や、料理や機器の操作ができなくなる実行機能障害など、脳の働きが障害されて起こるもの。一方、行動・心理症状は、中核症状のために精神状態や行動に悪影響が及んで起こる二次的な症状だ。
「本人が安心できるコミュニケーションを心がければ、暴言や暴力、介護への抵抗などの行動・心理症状を予防、改善できることがわかってきています。認知症の人が見ている世界を想像できれば、自然に優しい言葉が出るようになるはずです」
<対応のポイント>
●同じことを何度も聞かれたときは、言い回しを変えると、記憶として定着することがある。
●本人の「覚えていたい」という気持ちを尊重し、初めて伝えるように説明しよう。
●「私が覚えておくから大丈夫」と言うと、安心してもらえることがある。