夫婦にとって最大の危機がくる
加えて注目したいのが、49歳は脳機能の変わり目であるということ。
「脳は7年のサイクルで変わっていきます。7の7倍、すなわち更年期の年代にあたる49歳は脳が“ひと通り成し遂げた”と完遂感を抱く年ごろです」と話すのは、人工知能研究者で男女脳論の第一人者である黒川伊保子さん。ところがこの完遂感、先行きが見えない今の時代は、男性にとってマイナス要因に働く。
「不確かな状況では、完遂感は“終わった感じ”となって脳を襲い、テストステロンの減衰も伴って不安感がつのり、イライラして家族にあたりやすくなりがち」(黒川さん)
鷹揚だった夫が50歳近くなって急に「洗面所の電気、消しとけよ」などと細かいことをいちいち注意してきても、それは夫がイヤなヤツになったのではなく、脳機能とホルモンの変化によるものだという。
「一過性だと大目に見てあげて。あとワンサイクルたって56歳くらいになれば、達観の域に入り、安定してくるはずです」(黒川さん)
また黒川さんは「49歳を過ぎると、男性は少年の脳に戻る」とも。もともと男性脳はデリケートで、幼少期は母に寄り添い支えてもらわなければ頑張れない脳でもある。思春期を迎えてテストステロンの分泌が盛んになると、競争心や闘争心、独立心が芽生え、冒険の旅へと駆り立てられる。
「そして中年期になりテストステロンが減少すると、再び脳は繊細な少年の脳に戻ります。母から旅立った男性脳は妻の元へと還ってくるんです」(黒川さん)
それゆえ、男性は母を慕うように妻を慕い、依存するように。
「“どこ行くの? 何時に帰る?”なんて聞いてくることが増えるはず。これは“主婦のくせに何出歩いているんだ”という意味ではなく、単純に不安で、いつ帰るのかが知りたいだけ。5歳の男の子と変わらないと思ってあげてほしいです」(黒川さん)
共にしんどいとき、お互いに相手を理解
中高年の男性がいかにデリケートか、ということがわかった。とはいえ、妻側だってしんどい。
「お互いに更年期があるということを、理解し合うといいですね」(黒川さん)
イライラしたり落ち込むとき、脳は「自分が変わった」とは気づかないそう。だから「最近妻が怠惰だ」とか「夫がわからず屋でうんざり」となる。
「これはお互いに脳が脆弱になっている証拠。ギクシャク夫婦にならないよう、2人で理解し、新しい関係をつくってほしいです」(黒川さん)
また妻としては、夫の変化を見逃さないようにしたい。
「更年期の症状は心の変化だけでなく、見た目にも変化しやすい。特に体重はゆるやかに3~5kgほど増える人が多いです。ほかには笑顔が減ってため息をつくようになり、勃起不全、異常な発汗、めまいや動悸も主な症状です」(松下先生)
特に気をつけたいのが重篤な病気が潜んでいないかということ。テストステロンが減少すると、中性脂肪やコレステロールの代謝も低下。肥満を引き起こし、糖尿病、高血圧、動脈硬化につながることも。気になる症状があれば、医療機関を受診するのがおすすめだ。
【それ男性更年期かも?!要注意な夫の特徴をチェック】
□ なんとなく元気がない、いつも疲れている
□ 筋力が落ちてきた
□ めまいや耳鳴りがある
□ 不安感が強く、うつっぽい症状がある
□ イライラして怒りっぽくなった
□ ほてりがあったり、急に汗をかく
□ 不眠、寝つきがわるい、不眠傾向がある
□ 集中力が続かない、仕事効率が下がった気がする
□ 性欲がわかない
□ 朝立ちがなくなった
※3つ以上当てはまるときは男性更年期障害の可能性が大きい。5つ以上当てはまり、体調が悪そうと感じる場合は、医療機関の受診をすすめて。