「炎天下、バスに閉じ込められて、どんなに暑かったんやろうかと。そう考えると、いても立ってもいられなくて娘と花を手向けにきたんです……」
福岡市内から車で献花に訪れた50代の母親と中学生の娘は手を合わせていた。
かつて炭鉱で栄えた福岡県の筑豊炭田の一翼を担う中間市。そこにある私立『双葉保育園』で7月29日、変死事件が発生した。同日夕方、園児の倉掛冬生(とうま)ちゃん(5)が帰りの送迎バスに乗っていなかったことから、母親が同園に連絡した。
「同園は2台の送迎バスがあり、その日は朝と帰りでバスを替えていました。冬生ちゃんは、駐車場に置かれていた朝の送迎バスの中で倒れていたんです。すぐに病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認されました。死因は熱中症によるものでした」(地方紙記者)
園長は「気づかなかった」
朝の送迎バスは、40代の女性園長みずからが運転していて、その日は7人の園児が乗っていた。
「冬生ちゃんは後部座席で寝ていたため、園長はそれに気づかずに、降ろし忘れたのです」(同・地方紙記者)
気温30度を超える真夏日の中、冬生ちゃんは9時間も置き去りにされていたわけだ。同記者は続ける。
「送迎バスは園長が1年半前から運転手を担当していました。本来はもう一人添乗員が必要なのですが、バスに乗っていたのは園長だけ。さらにその日は出欠確認をするカードを冬生ちゃんからは受け取っていませんでした」
事件の2日後、保護者に向けて行われた説明会で園長は、こう話している。
「冬生ちゃんは寝ていたようですが、泣いているほかの園児に気を取られてしまって、彼に気づかなかった。また、到着時は、出迎えた職員がバスに忘れ物がないかを点検することになっているが、それをしていなかった」
だが“ほかにもチェックできるポイントがあったはず”と、保育園関係者は話す。
「園児が無断欠席の場合、担任が保護者に確認します。もし給食があれば、そこでも一人分多いとなって冬生ちゃんに気づけたはず……。すべてのチェックから漏れるなんて、普通の保育園じゃあり得ないことです」