DaiGo的二元論は孤立や攻撃的思考を招く

 DaiGoはいいオトナなので自分のことは自分でどうにかしてもらうとして、頼まれもしないのに私が危惧しているのは、人生経験の浅い若い視聴者がDaiGoのYouTubeを見ることで「本当の自信」から遠ざかるのではないかということです。DaiGoの動画の特徴として、「縁を切るべき人、信頼できる人の見分け方」というふうに、正反対のものを比較するタイトルが目に付きます。短い文字数で人の気持ちをひきつけるためには非常に効果的な手段なのですが、実際に人を「縁を切るか、信頼できるか」のように二分するのは危険な発想だと思います。

YouTubeチャンネル「メンタリスト DaiGo」より。人間関係をテーマにした動画は再生回数も多い
YouTubeチャンネル「メンタリスト DaiGo」より。人間関係をテーマにした動画は再生回数も多い
【写真】顔つきが変わった? フォークを曲げていた時代のDaiGo(2012年)

 たとえば、つらいことがあったとき、相手に話を聞いてほしい、優しく受け止めてほしいと思うのは当たり前のことです。しかし、相手にも都合や事情がありますから、忙しかったり疲れていたりして、いつも優しく受け止めてくれるとは限りません。それなのに「信頼できる人、縁を切る人」のように二元論で考えてしまうと、99回優しく話を聞いてくれたとしても、たった1回話を聞いてくれなかっただけで「冷たい人だ、縁を切ったほうがいい人だ」と思い込んで、自分から縁を切ってしまい、孤立してしまうことになりかねないでしょう。

 こういうトラブルを数多く経験すると、次第に「自分は人とうまくやっていけない、欠陥のある人間なのではないか」と自分を責めるか、「自分を傷つけたあいつが許せない」と他罰的・攻撃的な思考になっていきます。その結果、恋人に極度に依存したり、DaiGoのように社会的な条件で相手をねじふせるような発想になり、対人トラブルの素を増やしていくことになるのではないでしょうか。

 2019年9月18日に配信されたカジサックのYouTubeにおいて、DaiGoはメンタリストを志した理由について、小学校のころからいじめられていた事実を打ち明けるとともに、「まともに生きてきた人間は、人間の心を読みたいといか、心理に興味があるなんてならないんですよ」と発言しています。もし、「またいじめられたらどうしよう」という不安から人間心理に興味を持ったのだとしたら、問題は解決しない気がします。100%の確率でその読みが的中するなら安心できるでしょうが、はずれたとしたら、そこでまた不安になることは目に見えているからです。

 DaiGoのYouTubeはビジネスですので炎上商法を狙った可能性も否定できません。その結果ピンチに陥ったのなら、その責任は自らで取るしかないでしょう。本当にヤバいのは、知らず知らずのうちに、極端な成果主義や思考をすりこまれ、「本当の自信」から遠ざけられていく、情報の“受け手”な気がしてなりません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」