別居して夫に「婚姻費用」を請求

 その後、不倫の証拠を夫に突きつけ、別居することを決めた恵子さん。以前は恵子さんに対して事あるごとに大声をあげていた夫も、このときばかりは平謝りだったと言います。一時は寝込むほどの精神的ダメージを受けた恵子さんですが、それでも離婚に踏み切ることはありませんでした。

「今は『婚費』をもらいながら、娘を連れて別居中です。といっても娘の学校もあるので、隣駅なのですが」

 婚費とは「婚姻費用」の略で、夫婦や未成年の子どもの生活費など、婚姻生活を維持するために必要な一切の費用のこと。夫婦の場合、「生活保持義務」があるので、離婚するまでは収入の高いほうから低いほうに、それまでと同じ程度の生活ができる生活費を渡さなければならない、という決まりがあるのです。

「私の場合、婚姻費用は18〜20万円ほど。長い目で見たら離婚をして慰謝料をもらうよりも、別居したほうが断然有利なんですよね。これも調査員やカウンセラーの方からアドバイスを受けてわかったことです。子どもが成人するまでは離婚はしません。うつ状態のまま感情にまかせて離婚を選択していたらどうなっていたか……今考えるとゾッとします」

 前出の岡田さんは語ります。

「結婚生活を続けるにも、離婚をするにも、言い逃れのできない証拠は“お守り”にもなるし、“武器”にもなります。不倫をされたショックはつらいものですが、一時的なものでもあります。すぐに決断せずに、第三者に相談しながら戦略を練るほうが、確実に有利な条件で進められます」

 ただでさえ、心理的なダメージの大きい配偶者の不倫。苦しく、落ち込んだときこそ、大きな決断は避ける。これも大人の知恵なのかもしれません。

《取材・文/アケミン》