「治りますか?」はNGワード

 診察時に患者が悪気なく発する言葉に、医者を困らせたり、認識のずれを生んだりするNGワードが潜んでいる。

「特に気をつけたいのが『治りますか?』という質問です。医者は病気の診断・治療を行う専門家であり、自分の持っている解決手段を駆使して最善を尽くそうとしますが、すべての健康問題を解決できるわけではありません。そこで『治りますか?』、『絶対に〜〜ですか?』といった医者にすべての責任を負わせるような言葉を投げかければ、医者は言質をとられまいと、かえって不確実な答え方に逃げようとする場合もあります

医者が答えやすいように質問しよう(イラスト/伊藤和人)
医者が答えやすいように質問しよう(イラスト/伊藤和人)
【写真】“患者のNG行動”をイラストで解説

 医者にどうにかしてもらうという姿勢ではなく、医者と一緒に病気という困りごとを解決していく、という姿勢が好ましいと尾藤先生。

「『〇〇に困っているので何かいい方法はありませんか』という聞き方をすれば、医者も『完全になくすのはなかなか難しいですが、こういう方法があります』というように回答しやすくなります」

 そのほかにも、治療法を選択する場面で『お任せします』と返事をするのもNGだ。

「治療法にはメリットとデメリットがあります。例えば、再発の可能性が低いけど傷痕の残る手術と、再発率が上がるけど服薬のみの治療を選ぶ場合などです。こうした判断をすべて医者に委ねるのではなく、説明を聞いて積極的に理解しようとするなど、患者側の努力も必要です」

質問ばかりじゃ伝わらない

 診察を受ける際、病気の有無、将来への不安、治療の選択肢など、医者に聞きたいことは山ほどある。しかし、一方的に医者を質問攻めにしてしまうと、本当に必要なことを知ることができなくなってしまうかもしれない。

「医者が質問に答えるためには、まず患者さんの身体に何が起きているかという事実を把握し、原因を分析する必要があります。ですから、診察の初めに起きている事実をシンプルに伝えることが先決です」

まずは事実をしっかり伝え、質問はその後に(イラスト/伊藤和人)
まずは事実をしっかり伝え、質問はその後に(イラスト/伊藤和人)

 聞きたいことがある場合は事実を伝えたあとがおすすめ。さらに、質問形式ではなく、「耳鳴りで人の声が聞こえず、仕事ができません。いつまで続くか心配です」というように、何に困っていて、どうなりたいのかを伝えるとより適切な返事をもらえるようになる。

病院へ行く前に、自分は何に困っているか、何を恐れているのかを整理して簡潔にまとめておくと、不安な気持ちの解消にもつながりやすくなります」

病気のことは事前に調べすぎない

 自分が何かの病気かもと思ったら、まずインターネットでどんな病気なのかを調べる人も多いだろう。それ自体は悪いことではないが、調べすぎて頭でっかちになり、見当違いな不安に陥ったり、誤った自己判断を下したりすれば危険を伴うこともある。

調べすぎは禁物(イラスト/伊藤和人)
調べすぎは禁物(イラスト/伊藤和人)

「最近、自分は新型コロナに感染していると思い込んで来院する人が多いですが、大抵が見当違い。インターネットには医療情報があふれていて、専門知識のない患者さんが正しい情報を見極めるのは至難の業です。

 強烈な体験や命に関わる難病なども多く掲載されていて、こうした悪い情報はインパクトが強く無視しづらいため、自分に当てはめてしまいがちです」