電話相談を受けるブースは感染対策で1席開け、1時間に1回の換気も怠らない。だが、それでも感染不安から稼働する人数は減った。「千葉」では最盛期に約350人の電話相談員が在籍していたが、現在は実働160人に減少。相談員の9割が50代~70代だ。高齢化が進み人手不足が問題となっていたところへ、コロナが拍車をかけた。
「活動を開始した1989年から24時間の相談体制を維持してきましたが、昨年4月17日から夜間の相談を休止しました。自殺を考えている人は明け方に亡くなるケースが多い。本来は途絶えることなく相談を受けるべきで、苦渋の選択です」(斎藤さん、以下同)
遠方から通ってくる相談員も多く、感染拡大が起きている地域で電車を乗り継ぐことはストレスになる。感染を心配した家族の反対で通えなくなった相談員もいる。
「電話が鳴ってもすべては取れないのが現状。救える命があったのではないかと思うと、もどかしいです。緊急事態宣言が解除されれば、徐々に24時間体制に戻したいと思っています」
「電話受けたくても受けられない」
相談員の稼働数減少は受信数の減少にもつながる。「北海道」では、'20年の受信数は1万3423件。月平均に換算すると1000件ほどになるが、3〜5月はそれを下回った。相談員を確保できなかったためだ。だが今年は1000件以上を維持している。
「シフトをあけないことが大原則です。24時間体制は死守しようと思っていますが、それでも、相談員を確保できない時間帯ができてしまっています。電話を受けたいのですが、受けられない状態のときもあり、10日に1日は維持できない状況です」(北海道・事務局長の杉本さん)
コロナ禍だったこともあり、昨年は相談員を募集しなかった。人手の確保は積年の課題でもある。相談員になるための1年8か月の研修期間を短縮できないか検討中だ。
「千葉」でも、受信件数が落ちている。'19年は1万7000件ほどあったが、'20年は1万767件と減少した。夜間の電話を取れなくなったことが大きい。
「千葉の場合、相談員は1年半の研修を経てようやく独り立ちします。時間がかかるうえ、コロナの影響で研修に通えなくなり、中断したり、途中でやめたりする人も出てきている。できるだけ多くの電話を取りたくても、しばらくは現状維持で精いっぱいです。ただ、県や市も(いのちの電話とは別に)相談窓口を置き、手分けして対応してくれています」(千葉・事務局長の斎藤さん)
警察庁によると、'20年の自殺者数は2万1081人。前年比で912人増えた。自殺者が増加に転じたのはリーマンショック後の'09年以来、11年ぶり。なかでも目立つのが若者や女性の自殺だ。