チャンネル名変更に漂う“哀愁”
『マリオカート』のプレイ動画でもそう。冒頭の画面から「ひとりで」「みんなで」「インターネットで」と一通りカーソルを合わせながら、結局『ひとりプレイ』を選んで、
「まぁ、俺はひとりです」
とつぶやきカメラ目線。一瞬空いた絶妙な間に生まれる哀愁。自虐で言っているわけではなさそうだが、“ひとりマリオカート”はあまり聞いたことがない。
そんなこんなで『ゆたぼんゲームズ』の動画を続けてみてしまったわけだが、最も悲しいのはこのチャンネルが2020年12月を境にゲームプレイ動画をアップしなくなり、2021年には『裏ゆたぼんチャンネル』と改名してしまったことだ。4月にアップされたのは『カキフライの自動販売機がヤバかった』とタイトルのついたゲームとは全く無関係のコンテンツだった。
この動画からラッパー口調で「ウラ! ウラ! ウラッ! 裏ゆたぼん!」とのナレーションがついたオープニング映像も実装されており、完全にリニューアルをしていることがわかる。そして、「はいっ、今日はね、東京に来ているんですけれども。こちら見てください、自動販売機!」とオープニングトークを始めたときは、もう紳助喋りで──。
かつて「今はYouTubeやっているけど飽きたら(別の)好きなことをやる」と語っていたゆたぼんだが、あれだけカメラの前で楽しそうにしていたゲームチャンネルを“なかったこと”にしたのは再生数が稼げなかったからだろうか。それとも、ひとりでやるゲームにもう飽きてしまったのだろうか。
義務教育の名の下に小学生たちはたまたま近所に住み、偶然同じ学区だったというだけで“クラスメイト”と括られてしまうわけだが、一緒に『スマブラ』や『マリオカート』を楽しめる友達は、そんな縛りのなかから自然とできていくものなのかもしれない。
直近のゆたぼんはメインチャンネルで、平日の朝からゲーセンでメダルゲームをする動画(7月4日)をアップし、「貸切です! 俺たち以外誰もいない」とドヤ顔をみせていた。誰もいないのはそりゃ、みんな学校に行っているからだろう。娯楽がテレビゲームからメダルゲームへ。これを不良の階段を登る姿と重ねてしまうのは、私の地元でのみ通用するあるあるだろうか。
ゲームチャンネルで「うわー敵が強い! もう一回!」と興奮していたあの子は、もうじき声変わりを迎える。
〈皿乃まる美・コラムニスト〉