余裕があるからこそ不安を感じてしまう
まず、お金がないときはお金をかけて何かにハマるだけの余裕がありません。また、家族が闘病の真っ最中は不安になっている暇はなく、目の前のことをこなすだけで精一杯になるでしょう。ところが、お金がある人がちょっとしたトラブルを経験して、そこを切り抜けた状態のときは、よくも悪くもいろいろ考えてしまう余裕があるわけです。「今回は大丈夫だったけど、もしこの幸せが失われたらどうしよう」と思ってしまったら、ささいなことにも不安を感じてしまうのではないでしょうか。
私たちは、自分が思っているよりも不安に弱いものです。たとえば、YouTubeを見ていると、「シミだらけの妻だと、夫は若い女性と不倫をする(だから、このクリームを買え)」「妻が太っていると、セックスレスになる(だから、このダイエット食品を買え)」といった類の広告を目にすることがあります。外見上の欠点を指摘してコンププレックスを刺激し、「それを放置しておくとこんな悪いことが起きる」と不安をあおるCMが多いのは、そうすることで売り上げが伸びるからであり、それは、私たちが不安に弱いことの表れではないでしょうか。
不安というのは、性格の問題と思われがちですが、実はホルモンとも大いに関係があります。セロトニンというホルモンは感情を安定させる働きがありますが、このセロトニンが低下すると攻撃的になったり、反対に不安やうつになりやすくなるとされています。女性ホルモンの分泌が低下すると、セロトニンも低下しますので、女性ホルモンの分泌が変化しやすい女性は、不安になりやすいと言うことができます。
加えて、新型コロナウイルスはいつ収束するのかは見当がつかず、経済的な打撃を受けている人もいるでしょう。子どもの感染も増えてきましたから、特にお子さんを持つお母さんは気が気でない、不安な日々を過ごしているのではないでしょうか。
このように今は不安要素がとても多い時代と言えるでしょうが、もう1つ、人を不安に陥れるものとして、「思考のクセ」をあげることができます。心理学では「認知のゆがみ」と呼んでいますが、クセのある解釈をすることで、不安が増殖してしまうのです。
歌手・辺見マリは2015年9月14日放送の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)で、拝み屋にだまされて5億円ものお金をだまされてしまった経験について明かしています。当初は拝み屋を信用していなかったマリですが、一気に洗脳されていったきっかけは、拝み屋に「娘であるタレント・辺見えみりの目が見えなくなる」と言われたことでした。当初は全く信じていなかったマリですが、実際にえみりが近視になり、視力が落ちてきたこともあって、一気に信用することになってしまったそうです。
被害にあった人を例にするのもなんですが、マリのエピソードにも「認知のゆがみ」が潜んでいます。「えみりが近視になって、視力が落ちたこと」は、拝み屋の言うとおり、「えみりの目が見えなくなる」を意味するのでしょうか?