コロナ患者に限らず、感染防止の観点から現在は大半の病院が面会を断っている。老人ホームなど高齢者施設もしかりで、身内ですら入所者との面会は許されていない。従来のような看取りが難しくなった今、死は突然の事実として突きつけられることになる。
「通常はお見舞いを重ね、お顔を見ることで覚悟が固まっていくものですが、そのプロセスがない現状では、いざとなったとき強い喪失感に見舞われるおそれがあります」(久保田さん)
大切な人の不在を肉体的・精神的に理解するのはつらく、喪失から立ち直るには長い時間と周囲の支えが必要だ。実はそれらをすべて備えているのが、本来の日本の葬儀であり役割だと、久保田さんはこう続ける。
「まずお通夜で故人の顔を見て死を実感し、親族が告別式で集まって話をすることで、徐々に心の整理がついていく。日本のお葬式は非常に理にかなっているんです」
しかし従来のプロセスが踏めない今は、遺された者はどうやって気持ちの整理をつけていけばいいのだろうか。
「もっと優しくしてあげたかった、あそこに連れて行ってあげたかったと、遺された人はしてあげたかったことを積み重ねてしまいがち。だからこそ故人のために、してあげられることをお葬式で行ってあげてほしい」
と是枝さん。
「例えば火葬場へ行く途中、大好きだった場所に立ち寄ってあげられたとか、小さなことでいい。いいお葬式をすることが心の整理にもなります。
大変な状況下ではあるけれど、ぜひ故人のために何がいちばんかを考えて、見送ってほしい」(是枝さん)
大切な人が亡くなったときに何ができるか、葬儀の在り方を今、改めて見直す必要がありそうだ。