遊園地やテーマパークで事故が起こるときに考えられる原因は、大きく2つに分けられる。「物的要因」と「人的要因」だ。

 メンテナンス不良や設備の欠陥など「物的要因」で起きた事故のなかでも、象徴的なのが、2007年5月の大阪『エキスポランド』での事故だ。立ち乗り型コースター『風神雷神II』が走行中に脱輪し、女性客1人が死亡するというニュースが当時、大きく報じられた。

 事故調査の結果、車輪の金属製の車軸が折れたことが原因とわかり、月1回の定期検査や日常的な目視点検も行われていなかったことが発覚している。この事故によって同園は客足が減少、2009年2月に閉園となった。

「この事故が起こるまでテーマパークの施設メンテナンスに関する法令は定められておらず、それぞれの園の努力義務というレベルの話でしかありませんでした。

 しかし、エキスポランドの事故を受けて、ジェットコースターなどには年に1回以上(東京は年に2回)、車両を分解して検査し、国へ報告することが法令で義務付けられるようになりました。以来、脱輪による事故は起こっていません」

「物的要因」で起きる事故を防ぐには、定期的な検査や試運転などで異変に気付くことが重要。それには熟練したスキルと知識、経験に基づく勘所を備えた技術者の存在が大きい。ところが、

「機械の特徴を熟知するようなメンテナンスのスキルを持つ、この業界に特化した技術者の数が圧倒的に足りません」

 また、安全装置のつけ忘れや確認ミスといった「人的要因」で起きる事故も少なくない。

 2011年1月に『東京ドームシティアトラクションズ』で起きた事故では、座席が360度回転するタイプの『スピニングコースター舞姫』に乗車していた男性が転落死している。

 原因は、遊園地のスタッフが安全バーを下げ忘れたことにあった。身体が座席に固定されないままだったため、走行中に遠心力によって振り落とされてしまったのだ。

「この事故がきっかけで、安全バーを目視で確認するだけでなく、スタッフが実際に手で触って動かないかどうかをチェックするようになりました。全国にある多くの遊園地で、それがマニュアルに追加されるようになったんです」

 さらに、安全に特化する組織を作り「危険予知トレーニング」を行う遊園地やテーマパークが増加。朝礼の際、その日の天気や団体客の予約を把握し、起こりうる事故をスタッフ同士で事前に確認・共有するなど、安全への意識を高める動きも見られるようになったという。

ただ、東京ドームシティの事故は、安全バーが下がっていなくてもジェットコースターを走らせることができたという物的要因も影響しています。

 そのため最近建設されるジェットコースターには、安全バーが下がっていなかったら発車ボタンを押してもコースターが動かないなど、機械の改良が行われるようになりました。

 また子どもが飛び出すのを防ぐ目的で、駅などで見かけるホームドア装置を設置する施設も増えています