東京の医療崩壊をうかがい知ったのは、転院先で撮った肺のレントゲン写真だった。

「肺炎治療専門の先生が僕のレントゲン写真を見たとき、第一声が『東京はこの症状で退院させるの? 通常ではありえない』でした。東京では多くの命を助けるために、できるだけベッドを空けなければならない状況だったと思います。しかし、この状態での退院は、すでに『医療崩壊が起きている』と判断される状況だったようです」

右・8月24日、東京1回目の入院で、退院2日前、左・9月2日、愛知県の病院で撮ったレントゲン写真(写真:取材者提供/東洋経済オンライン)
右・8月24日、東京1回目の入院で、退院2日前、左・9月2日、愛知県の病院で撮ったレントゲン写真(写真:取材者提供/東洋経済オンライン)
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「当初、転院先の病院では1日から2日の入院で終わる予定でした。しかし僕のレントゲン写真を確認した先生から、『退院するレベルではなく、1~2週間入院の必要がある』と説明を受けました」

 入院は1週間ほどだった。味覚や嗅覚障害は継続していて、食べるものは味がしない。しかし、ゼリーやすまし汁は風味を感じやすかった。入院3日目に、コンビニで買った「キレートレモン(クエン酸入り)」のゼリー飲料は、コロナにかかってからはじめて味を感じた。約1カ月ぶりのことだった。

 治療にはステロイドの強めの薬が投与され、9月2日から6日でかなり良くなった。本来2週間の入院だったが、通院でも大丈夫だと診断され、9月7日に退院できた。

左・9月2日、愛知のセカンドオピニオン病院の入院時、右・9月6日、同病院の退院時 (写真:取材者提供/東洋経済オンライン)
左・9月2日、愛知のセカンドオピニオン病院の入院時、右・9月6日、同病院の退院時 (写真:取材者提供/東洋経済オンライン)

周りの人のおかげで生かされているとわかった

「僕の命が助かったのは、運と、周りの人の助言が大きかったです。最初に熱が出たとき、『東京都発熱相談センターに電話するのが確実だよ』と教えてくれた人がいました。検査で陽性になり、宿泊療養施設のホテルへ向かうと、ホテル内の酸素の検査で血中酸素飽和度が『72%』と出て、その日にうちに入院。数日であっという間に容態が悪くなったので、自宅でただ寝ているだけだったら、命を落としていたと思います」

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「助けてくれた医療従事者の皆さんには本当に感謝しています。ただ、東京のコロナ治療の病院では、コロナウイルスを退治することはできても、肺炎のまま退院させられる状況だった。これは仕方ないと思います。だから、今後コロナで重症化した人は、肺炎を治療するためのセカンドオピニオン病院を見つけることが大事なのではないか……。自分の経験から、強く、そう思いました」

 8月下旬以降、東京のコロナ新規感染者数は日増しに減っている。しかし次の第6波が到来する可能性はあり、油断はできない。コロナはつねに「命の危険と隣り合わせになりうる感染症」と認識して「万が一」を考えて行動しなければならない。


斉藤 カオリ(さいとう かおり)Kaori Saito 
女子ライフジャーナリスト、コラムニスト 神奈川県出身、2000年桐朋学園芸術短期大学 演劇専攻卒。合同会社ジョアパルフェ代表。舞台女優、歯科衛生士の仕事を経てフリーライター・エディターに転身し、日経womanなど複数の女性誌や週刊誌、Webで執筆。その中で、働くママ向け媒体制作で出合った500人以上のシングルマザーの苦悩・本音に大きく心を揺さぶられ、現在も独自に取材を継続。『女性の自立と生きがい』を応援する事業も行う。3児の母でもある。
https://saito-kaori.com/