高校時代に培った目標達成テク

 目標を明確にし、その実現のために練習を積んできた大谷。どんなにつらい練習にも楽しさを見いだして高い目標を達成できた秘訣は、高校時代に作成していた「目標設定シート」だという。

「目標設定シートは、中央のマスに目標を記入し、その周囲に目標を達成するために必要な要素を書き出したものです。このシートを作成することで、やるべきことが明確になるだけでなく、つらい練習にも価値を見いだしながら積極的に取り組む自主性が養われたのです」

 また、「目標設定シート」で大きな目標を細かい要素に分けることで、小さな目標を日々達成していくことができ、「自分はできる」「だから頑張ろう」という自己肯定感とやる気が生まれるのだ。

「例えば、あなたが老後資金2000万円を貯めたいと思った場合、ただ漠然と貯め始めるよりも、左の図のように、細かい目標に分けるのがポイントです。まず何をするべきか見えてくるでしょう」

球速165キロが生まれたワケ

 細かい目標をつくり、それに向けた行動を始めたら、重要なのは継続することだ。そのためにはモチベーションの維持が大事になってくる。

「モチベーションを高めるためには、目標を『数値化』することが効果的です」と児玉さんは言う。

 具体的な数値を入れた目標を立てると、記録が伸びることがさまざまな実験データで実証されている。

「高校時代の大谷選手がプロの選手でもなかなか投げることのできない160キロの球速を目標にしたように、ダイエットなどでも『2キロやせる』と具体的な数字を挙げるほうが、漠然と取り組むよりも俄然やる気が出て、目標達成率が高まります」

 大谷が作成した高校1年生の目標設定シートにはしっかりと「スピード160キロ」と書かれている。こうした数値化による目標を常に持っていたことが、日本新記録となる球速165キロの達成につながったのだろう。

 ちなみに、小学生の立ち幅跳びの実験によると、目標の10%アップの数値を目指すと最大の効果が得られることがわかっている。

 そのため、例えば毎月5万円を貯金しているとして、その額を増やしたいなら、10%アップの5万5千円を目標にすると達成しやすいということだ。

 ひとつの目標を達成できれば、モチベーションがさらに高まり、大きな目標の実現に確実に近づくだろう。

 大谷翔平流の「ポジティブマインド」は私たちのような普通の人にも役立つものだ。この3ステップを意識して、ぜひ、日々の暮らしに役立ててみてほしい。