心に寄り添う医療だからこそ僕のことを知って安心してほしい

 YouTubeの影響で、全国からクリニックを訪れる患者さんが年々増加。現在、幹弥先生個人の診察はなかなか予約が取りづらくなっているという。それでもほぼ毎日動画の配信を続け、近年ではその内容もバラエティー豊かだ。

 整形の情報から、アニメのキャラクターの美形度や政治情勢の解説、悩みへの回答もあれば、幹弥先生が「ミキキン」「ミキル」といった人気YouTuberに扮したパロディー。食レポ、筋トレ方法、愛犬の秋田犬と戯れる様子に至るまで、さまざまな企画を配信している。人気美容外科医として多忙を極めているはずなのに、実にバイタリティ豊かなチャンネルなのだ。

「僕の場合は、ひとりでしゃべって、ひとりで撮影して、ほとんど編集もしていません。無理をしていないから続けてこられたんですよね。いろんな動画を配信するようになったのは、美容整形の患者さんたちに限らず、さまざまな層の人たちに見てもらいたいから。

 同じ内容ばかりだと飽きられてしまいますからね。内容の豊富さには自信があります。登録者数や再生回数などは、超有名YouTuberたちのレベルにはまだまだですが、内容の豊富さでは、ステハゲには、勝てたような気がします(笑)」

YouTubeとしての活動を続ける理由

 とにかく幹弥先生は、まじめなのだ。お悩み相談への回答をする際には事前に自分の意見に関する根拠を調べ直しているし、発言に抗議が来たらすぐに謝罪し、解説する。せっかく見てくれているならと、激辛カップ焼きそばを頬張ったりと、身体を張ることもいとわない。

 幹弥先生がYouTuberとしての活動を続ける理由は、もうひとつあるという。美容外科医は、著書のテーマでもある「お悩み」を抱える人たちに寄り添う職種ゆえに、「担当してくれる医師がどんな人間であるかを知って、安心してほしい」という思いがある。

美容整形を繰り返す患者さんの中には、醜形恐怖症(身体醜形障害とも呼ばれる)という心の病を抱えている人も少なくありません。最初の問診の際に必ず投薬歴や既往歴について確認するのですが、ADHDや躁鬱病などの治療を受けていると回答する方も一定数いらっしゃるんです。本人が隠していても、数分話して、メンタルに問題を抱えていることがわかるケースもあります。

 そもそも美容外科は、自分の外見が好きになれなかったり、なんらかの理由で整える必要があるパーツがあったり、手術を受けることで『自信を持ちたい』という思いでやってくる患者さんばかりです。ただ身体を整えるだけでなく、心のケアも必要な場所。

 その一方で、今、美容整形業界では過当競争が起きている。患者さんよりも美容外科医の増加率のほうが高く、初診0円、手術費用数万円〜と価格競争が激化してしまっています。ただ、人のメンタルに寄り添う医療だからこそ、話してみたら手術が必要ないケースも多々あるんです。

 となると、初診0円ではそもそも元が取れませんよね? 結果、強引に手術をすすめざるをえないような状況に陥ってしまう。そうなればトラブルも増え、悪質と見られるクリニックも増えてしまいます。

 だからこそ、僕は技術力と信頼を持って、患者さんと向き合いたい。今後もYouTubeでみなさんとコミュニケーションをとりつつ、自信を持てる人たちを増やしていきたいですね

 美容外科は「幸福のための医療」ともいわれている。幹弥先生のYouTubeは、まさに人々の幸福のためのYouTubeといえるかもしれない。