「コロナ禍でステイホームしていた間は、老人犯罪も多少は減っていたでしょう。しかし、室内にこもって孤独と怒りをため込んでいたかもしれません。ステイホームもほぼ明けたいま、危ない老人が一気に街に出てくる可能性があります」
高プライド老人に要注意
孤独な老人ほど犯罪に手を染めやすいのなら、周囲の人間としては、小まめに声をかけるなどしてあげるのがよいのだろうか。
「そうとも言い切れません。おじいちゃん元気? なんて声をかけると、子ども扱いしやがって……と怒りを買うこともあります。いちばんいいのは、習い事や老人会に参加するなど、本人が自分で環境を変える努力をすることです」
カルチャーセンターや町内会の集まりなどに出かける老人の中で、罪を犯すような人はまずいないという。
しかし孤独に陥っている老人は、プライドが高い人が多く、「年下にものを習うなんて」「ジジババの集まりなんか行っていられるか」などと自分から垣根をつくってしまいがちなのだ。
昔は高齢者の知識や経験が重宝され、子どもや孫たちに頼られていた。けれども今や知りたいことはすべてインターネットで知ることができる。老人の知恵など必要とされなくなってしまったのだ。
「とはいえ、老後は20年以上もあるので、プライドを捨てて新しいことにチャレンジし、豊かな余生を送ってほしいですね。それを社会が後押しすることがシニアの犯罪抑制へとつながるのです」
82歳老人ストーカーの末路
20代の女性会社員に付きまとったとして逮捕されたのは、熊本県に住む82歳の男性。
女性が働くお店に客として訪れた際、親切にされたのがきっかけで、自宅や勤務先を訪れては交際を迫るなどの行為を頻繁に繰り返した。
警察からも警告が行われたが、ストーカー行為がなくならないため、逮捕に至った。
これは2010年の事件で、越智先生が印象に残っている高齢者犯罪のひとつ。
「高齢者のストーカーは意外と多いんです。“最後の恋”だと思っているので必死だし、ラブレターや花束を渡す、電話をかけるなどの行為なので、逮捕もされにくい。
けれども、金も時間もあるからどこまでも追いかけてくる。ストーカーとしては、高齢者はかなりタチが悪いともいえます」
<取材・文/樫野早苗>