予備校で出会った年下の夫
貴子さんは近所の個人塾に入り、中学1年生の計算問題からやり直した。
「中学時代、苦手な数学はほとんど勉強しなかったから、すごく新鮮でした。わかることは楽しいんだって」
中学の復習を終え、松江市内にある予備校に入った。そこで出会ったのが現在の夫、前島充雅(みつまさ)さん(46)だ。横浜国立大学の数学科を中退して医学部を受け直すという充雅さんに、最初にアプローチしたのは貴子さんだった。
「数学を教えてもらう目的で近づいたんです(笑)」
貴子さんの経営する薬局に充雅さんは足しげく通った。
「僕が教えに行くと、いつもうな重とか蕎麦とかとってくれて、胃袋をつかまれましたね(笑)。通っているうちに自然と、付き合おうかという話になって。そこで初めて彼女が11歳年上だと知って、キャーッと(笑)」
出会ったとき、貴子さんは32歳。充雅さんは21歳だった。年齢的に「何となく付き合うことはできない」と貴子さんが言い、結婚を前提に交際を開始した。
充雅さんの両親には「年の差がありすぎる」と反対されたが、「許してもらえないなら絶縁する」とまで言って、思いを貫いたのだという。
そこまで貴子さんに惹かれたのはどうしてか。理由を聞くと、充雅さんは少し照れながら教えてくれた。
「とにかく1つのことを決めたら、絶対にあきらめないという姿勢ですかね。いい意味でも、悪い意味でも(笑)。
学力は達していないのに、『絶対、医者になって人を助けるんだ』とずっと言っていて、『初めて会ったなー、こんな人』と思って。僕は何となく医者になれたらいいなと思っていただけなので、圧倒されましたね」
学費の安い国公立大の医学部を目指してセンター試験を受けたが、貴子さんは2次試験に進めず、充雅さんは2次で落とされた。
翌年、充雅さんは志望を変更して、九州大学工学部に合格。福岡に引っ越して'99年7月に結婚式を挙げた。