実際に「変えた」「辞めた」母親たち
でももちろん、こういった掟に法的な根拠はありません。実際は、従わなくてもなんら問題はないのです。
筆者の新刊『さよなら、理不尽PTA!』には、そんな不確かな掟や恐怖心に負けず、PTAを変えた人や、PTAを去った人が、たくさん登場します。
たとえば、PTA会長になって、「ポイント制」をはじめ、PTAのあらゆる強制の仕組みをなくし、新聞などにも紹介された竹内幸枝さん。
異なる意見にも正面から向き合って話し合い、改革を進めてきた結果、PTAは以前とすっかり変わり、あたたかい雰囲気が生まれたといいます。
竹内さんは「空気を読めないわけじゃないけど、敢えて読まない」ことを「KYY」と名付け、「世に広げよう、KYY」と話していました。
もうひとり、優しさのかけらもないPTAのやり方に失望し、「退会」を選択したDさん。はじめは子どもへの不利益を心配しましたが、実際は何ら影響はなかったそう。「退会するのであれば、子どもに記念品を渡さない(実費を払えば渡す)」とする、残念な対応も一部にありましたが、何年もかけて問題を指摘し続けたところ、最近はそれも改められたようです。
なぜ、Dさんはうまく話をできたのか。
考えられる理由はいくつもありますが、文書やメールなど記録に残る形でのやりとりを優先したこと、期限を添えて回答を求めたこと、保護者であるPTA会長ではなく、校長・教頭先生に話をしたこと、誰も責めなかったことなどが、大きかったかもしれません。
Dさんは、SNSのプロフィールにこう掲げます。「言いたいことは言おう。空気読めてても、腹に力を込め、敢えて読まない空気は大事。沈黙は追認と同じだから」と。
母親だって、本当はできるのです。人と違うことをしてもいい。おかしいことは我慢しなくていい。陰口を言う人もいるかもしれないけれど、そんな人のことを、気にしなくてもいい。
PTAだけではありません。世間から期待される「いい母親像」なんて、大概は根拠のないもの。本当は、わが子が求めるそれにこたえていれば十分なのです。
だいじょうぶ。掟を破っても、本当に恐れなければいけないようなことは、実は起きないのです。母親たちがそのことに気付いたとき、PTAは大きく変わるのかもしれません。
大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。ノンフィクションライターとして活動し、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。著書は『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)など多数。11月12日には『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)を出版。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
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