トー横キッズのお父さん
歌舞伎町での氏家さんは、若者たちの“お父さん”的な存在だったようだ。
「よく若い子の相談に乗ったり、売春している子の悩みを聞いて心のケアをしたりしていました。家庭で暴力を受けている女の子と父親の間に入って、仲裁をしてあげたこともあった」
みんながいる前で突然、リストカットを始める少女や、小学生くらいの子どもまでこのトー横界隈に流れ着いてくるという。
「中には集まってくる少女を食っちゃう悪い大人もいるのですが、氏家さんは手を出すことは一切なかったですね。むしろ慕われていて、少女から関係を求められることもあったほど。反対に、氏家さんもお金のある子どもからご飯をおごってもらったり、衣服などをもらったりもしていました」
Aさんも氏家さんのことを気にかけて、食事をごちそうしたり、自宅に招いたりしたという。
さらに彼をなんとかホームレスの状態から救ってあげようとも努めていたが、
「本人にその気がないようなので結局、諦めました。歌舞伎町が居心地よかったのか、離れられなかったようです」
そして時は流れ、寒い季節が近づく中、氏家さんは事件へとつながる不幸に見舞われる……。