アイドルグループ全盛期の中で……
'97年デビューのモーニング娘。以来、ハロプロことハロー!プロジェクトがアイドルシーンを席巻していたからだ。「SAYAKA」がCMデビューした前月には、松浦亜弥が歌手デビューしてヒットを連発。「聖子の再来」とまで呼ばれていた。
そんなハロプロの勢いにたったひとりで対抗するのはさすがに分が悪く、それもあって、正統派のアイドル路線にはしなかったのかもしれない。
しかも、アイドルという文化のトレンド自体、ソロからグループへという転回点に来ていた。松浦ですら、しばらくすると、後藤真希や藤本美貴、安倍なつみなどと組むユニットで活動するようになる。
一方「SAYAKA」には、ユニットを組めるような相手がいなかっただろう。アーティスト性を持ったアイドルとしてスタートを切ったものの、セールス的には尻すぼみになっていった。
とはいえ、シングル第2弾『garden』では作曲も手がけたり、第3弾の『水色』以降はday after tomorrowの北野正人とコラボしたりと、充実ぶりを示している。'05年にはファーストアルバムも発表した。
ところが、その3か月後、活動を休止する。所属事務所によれば、
「高校卒業をひと区切りとし、この機会にゆっくりと時間をとっていろいろなことを勉強し、将来のことを考えたいという本人の意思により」
とのことだったが、その背景に彼女と北野との交際、それをよしとしなかった聖子との確執があるとも報じられた。
ただ、彼女が約1年半の休止期間に「いろいろなことを勉強」したのも事実だ。人生経験のため、飲食店でアルバイトもしたという。
そして「神田沙也加」の名で活動を再開。ミュージカル女優や声優として活動することになる。'14年には、ディズニーのミュージカルアニメ『アナと雪の女王』日本語版でヒロインの声や歌を担当。高い評価を得た。
その後も遺作となった『マイ・フェア・レディ』まで、このジャンルでの活躍が続き、アイドルだった頃の記憶は忘れられていったが――。