本当に使える英語民間試験は?

 ひと口に英語民間試験といっても、おなじみ英検のほかにもTOEIC、TOEFL(トーフル)等々、さまざまな種類がある。実際にどのような試験が活用されているのか、石渡さんに教えてもらった。

 まず、大学入試の場ではどうか。

「英検とTOEICの両方を活用している大学が多いです。ただし旺文社の調査では、受験生が利用する英語民間試験のうち、英検は利用率92.2%とほかを圧倒しています。
英検は英語民間試験のなかでいちばん規模が大きく、試験会場も全国に約2万か所あります。一次試験が筆記で、二次試験ではスピーキングが行われるのですが、一次に合格すると次回受験時から3回まで一次試験が免除の扱いになり、受験対策がしやすい。そうした理由から支持を集めているのではないかと思います。

受験生が利用する『英語検定』の利用率は全体の92%を超える
受験生が利用する『英語検定』の利用率は全体の92%を超える
【写真】今回解説してくれた大学ジャーナリストの石渡嶺司さん

 デメリットとしては、試験が年3回なので、ほかの英語民間試験に比べて受験チャンスがやや少ない。また、検定料の高さも問題視されています。例えば英検の場合、高校生の受験が多いといわれている準2級は9200円、2級は9700円(2021年度)。加えて会場までの交通費も自腹ですから、経済的に厳しい家庭や、試験会場が遠方にある僻地や離島の子どもほど負担が大きくなります。ツイッターデモやオンライン署名による抗議活動が行われた結果、主催団体が2022年度の検定料の引き下げを発表したほどです」

 海外留学を視野に入れている場合、TOEFLが役に立つ。

「英語圏の大学大学院に留学を希望する場合、TOEFLスコアの提出が求められます。最近は入学後の留学を見越して、入試の際にTOEFLを指定し、スコアを成績として使う大学も少なくありません」

 ほかにもベネッセコーポレーションが主催するGTEC(ジーテック)、TOEFLと同じく英語圏の大学で語学力の証明となるIELTS(アイエルツ)等々、さまざまな英語民間試験がある。前述したように、大学入試では「ひとり勝ち状態」といえる英検だが、就職となると話は別。

「就職活動の場ではTOEICの価値が高くなります。グローバル関連企業を中心に、最近は採用条件に“TOEICスコア600点以上”などと指定している企業が多いためです。それを受けて大学側も就活を見越して、TOEICスコアを入試の条件にしたり、TOEICを英語教育の軸にしたりするところが増えてきています。TOEICの試験はリスニングとライティングの2本立て。地域にもよりますが、試験が基本的に月1回は行われ、受験しやすいというのも特徴です」