転職の場合、「全商ビジネス英語検定」「日商ビジネス英語検定」といった専門分野に特化した英語検定が活用されることも。

「いわゆる商業英語に関連する資格試験ですので、この2つを取得していると、企業によっては専門性の高さが評価されることもあります。『技術英検』、『観光英語検定』などの資格にも同じことが言えます」

 とはいえ当然のことだが、こうした語学力を証明できる資格さえ持っていれば、誰もが必ず就職できるというわけではない。

中高年にも襲いかかるグローバル化の波

「最近は英検やTOEICで優秀な成績を修めた学生が増えています。ところが、高スコアだから就活がうまくいっているかというと、そうとも言い切れないんです。なかにはTOEIC400点と低いスコアであっても、某外資系大手の内定を勝ち取った学生もいます。

 新卒の就活は『ポテンシャル採用』といって、コミュニケーション能力やリーダーシップ、学生時代に力を入れたことなど語学力以外の評価ポイントも重視されるためです。また転職の場では、とりわけグローバル関連企業になると、英語はできて当たり前。そのうえで何ができるのかが問われます」

 ここまで読んで、“最近の若者は大変。今の時代の受験生じゃなくてよかった……”と、胸をなでおろしているそこのあなた。油断してはならない。英語重視の風潮はとどまるところを知らず、すでに中高年となった大人たちにも容赦なく襲いかかる。

大学受験や就職活動の動向に詳しい、大学ジャーナリストの石渡嶺司さん
大学受験や就職活動の動向に詳しい、大学ジャーナリストの石渡嶺司さん
【写真】今回解説してくれた大学ジャーナリストの石渡嶺司さん

地方の製造業が海外メーカーと取引をしたり、農家が海外へ野菜や果物を輸出したりと、外国人が少ない地方にいながらも世界を相手にビジネスを行う機会が近年、増えつつあります。日本で暮らし、日本の企業で働く人であっても、英語が必要とされているんです。

 転職の場で英語民間試験を採用条件に科す企業も増えるかもしれません。こうした傾向は今後、拡大していくことはあっても衰えることはないでしょう。お金や時間をかけないと英語力は身につかないもの。オンラインで学べる市民向け講座を開いている大学もあるので、気になる人はチェックしてみては?」

 今後、ますます需要が高まっていきそうな英語民間試験。石渡さんが目下気がかりなのは、子どもたちにおよぼす影響だ。

「英語民間試験の共通テストへの導入が検討された際、検定料や地域格差について批判を集めましたが、これらの問題は今も解消されていません。加えて、子どもたちに教える教員の英語力も課題です。英検準1級以上レベルの教員は中学で4割程度、高校で7割程度にとどまるのが現実。

 教える側の英語力が高くなければ、スピーキングやリスニングなど民間試験のために求められる勉強に対応できません。優秀な教師をそろえられる進学校ほど有利になり、やはり教育格差につながってしまう。こうした問題をどう手当てするのか対策を講じていく必要があると思います」