状況によっては電車でも感染する

 では、改めて満員電車は本当に感染経路となり得るのか。感染症に精通する、『とうきょうスカイツリー駅前内科』院長で医学博士の金子俊之先生に話を聞くと、「結論から申しますと、満員電車で感染しないということは絶対にあり得ません」

と、やはり感染リスクはあるとのこと。

「そもそも“満員電車で感染しない”という論調がおかしかったわけですが、ただ実際に車内で感染が起きた、起きてないを否定したり証明することは難しいのです。オミクロン株に限らず、デルタ株であっても満員電車で感染するケースはおそらくあったのではないかと思います。

 オミクロン株が空気感染を引き起こすとは申し上げませんが、それに近いくらいの感染力はあるとみられていることから、人と人との距離が近い満員電車では“状況によって”は十分に感染しうると思います」

 金子先生が言う“状況によって”とは、例えば朝の満員電車マスクをせずに大声で話をしている乗客はいないだろう。この場合は感染リスクは低いのだが、帰宅時の車内では同僚や友人同士とのお喋り、さらにお酒を飲んだ後は大声になっているかもしれない。時にマスクがずれている乗客もよく見る光景だ。

「その状況では、(満員電車に限らず)通常と変わらない感染リスクはあると思います。それにマスクは飛沫やウイルスの排出を100%抑えるわけではありません。感染者がマスクをしていてもお喋りをしていれば、咳をしたとすれば満員電車という空間内で感染する場合も十分に考えられます。

 私たちがすべきことは真新しいことではなく、これまでと同じでしっかりとマスクをして近くに人がいる時は会話を控える、また咳エチケットで飛沫を抑えることが大事だと思います」(金子先生)

 満員電車であろうとなかろうと、各々が意識して感染対策をとらなければリスクは同じということか。