中高年が“ひきこもりなったきっかけ”は「退職」が多くを占めて
中高年が“ひきこもりなったきっかけ”は「退職」が多くを占めて
中高年がひきこもりになる“きっかけ”とは?やはり仕事関係が多く……

 40歳から64歳でひきこもるきっかけとして、いちばん多いのは「退職」(2019年内閣府データ)。親の介護や定年で職場を去り、社会と関わる場を失ったため、自然と孤立しやすくなる。

 次いで多いのは「人間関係」。仕事上でのストレスやパワハラ・セクハラなどをきっかけに、人間関係が困難だと感じるようになると再就労も難しくなってしまう。調査の回答者の7割以上は正社員の経験があるという。

「現代社会ではコミュニケーションが最も重要視されます。人間関係がうまくいかないと、社会での居場所がなくなってしまう。そういう時代になっています」(深谷さん)

叱咤も激励も禁句 親子関係の修復を

 自分亡きあとわが子はひとりでやっていけるのか。当事者の親にしてみれば、心配は尽きない。死んでも死にきれない思いだろう。

 もしかしたら思い直して再就職してくれるかもしれない、新しい環境に自ら飛び込んでいってくれるかもしれない。どうか、どうか……。しかし、ストレートにそんな不安や期待をわが子にぶつけるのは思いとどまったほうがいい。

ひきこもっている本人も、働けない自分を一日中責め、疲弊しています。そんななかで毎日のように親に叱咤されたり激励されると、余計に本人を追い詰め、親子関係を悪くしてしまう」(深谷さん)

「この年になって何をやっているんだ」「おまえの努力が足りないんだ」などといった言葉は、ひきこもっている人にとっては絶対に禁句。励まされるどころか、余計に社会に出る機会を逃してしまう。

「ひきこもってしまった子どもは社会との関わりがなくなってしまう。すると自宅では『親と子』のみの環境になってしまうのです。ひきこもり問題はそうして次第に、親子間の問題へと変化していくこともあります」(桝田さん)

 子どもに行政からの支援を受けてもらうにしても、まずは親から働きかけないことには始まらない。

ひきこもりの本人に接触できるのも、何か行動を促すのも、最初は親しかいないのです。だからもし子どもがひきこもった場合、何よりも親子関係の緊張を解くことから始めなければなりません」と専門家たちは声をそろえる。親子関係の回復が他者との関係の改善につながり、それが支援を受けるきっかけにもなる。そうして社会復帰の一歩を踏み出せるのだ。