校庭からも楽しそうな声が聞こえてくる。校舎を出ると、真っ青な空を背負った富士山が正面にあった。校庭にある遊具は、子どもたちの手作りだ。甲府盆地を吹き抜ける冷たい風の中を『わくわくファーム』のクラスの子どもたちが転がるように走っていく。その先には鶏と豚、羊たちがいた。
「羊の糞を掃除してこの箱にためるの。肥料にするから」
「小屋も作ったんだよ」
「風が強いから、屋根の波板が飛ばされて、何度もやり直して大変だった。小屋ごと横に倒れたこともあったよ」
初めて会う取材陣にも子どもたちは詳しく説明してくれる。
「せっかく作った小屋が倒れちゃったの? 大変だったね」と声をかけると、すぐにこう答えた。
「倒れたら、今度はもっと工夫して、風に倒されない小屋を作ればいいんだよ」
子どもたちの笑顔は、自信に満ちてたくましい。
『本物の仕事』に取り組む
南アルプス子どもの村小学校の母体は、和歌山県のきのくに子どもの村学園だ。1992年、1つの小学校から始まった学園は、小中学校各5校、高等専修学校1校、全部で11の学校に広がっている。
学園長の堀真一郎さんは、和歌山、福井、山梨、福岡、長崎にある5校すべてを、自ら運転する愛車のパジェロとフェリーを使って毎週欠かさず日替わりで回る。この全校を回る生活を20年間続けているというから驚く。
「子どもの村に学年ごとのクラスはありません。工務店、ファーム、料理、ものづくり、劇団などのプロジェクトごとにひとクラス20〜30人。毎年、子どもたちが自分の関心で自由に選ぶため、過去には、希望者がたった3人というプロジェクトもありました」
ある年の3月、4年生の男の子が堀さんに相談に来た。
「あのな、堀さん。来年度のクラスやねんけど、僕が選んだ料理店は希望者が3人しかおれへんねん」
「え、3人だけか」
「このままでは担任の大人がやる気をなくす……」
その男の子は、大人のやる気を心配していた。堀さんはしばらく考え、鶏を飼うことを提案。希望者は20人に増え、卵料理をテーマに据えて活動は盛り上がったという。
「プロジェクトは子どもが主人公の知的探究です。学ぶ楽しさ、仲間と触れ合う喜びをたっぷり味わいながら、『衣食住』や『いのち』をテーマに活動します。活動を通して知性と手と身体が鍛えられ、いろんな学びが広がります。『ままごと』ではなく、『本物の仕事』に取り組む。子どもは、面白いと思えば熱中することができるんです」
それぞれのテーマは入り口が異なるだけ。子どもたちの話し合いを軸に学びはどんどん展開していく。大人たちは展開しやすいテーマを十分吟味して準備している。
例えば『わくわくファーム』では、羊の世話というテーマから、その小屋を建て、羊の世話をする。羊の毛を刈り、羊毛から毛糸を作って織物を作る。モンゴルのことを調べ、モンゴル料理を作る。台風がくるときは天気について学んで対策を考える。そしてプロジェクトで調べ、活動したことを原稿にして冊子を作り、劇にして発表する──。