羽生選手のボーヤン選手への“神対応”が広く知られるようになったのは、2018年の平昌五輪で羽生選手が2連覇、ボーヤン選手が中国選手として過去最高の4位入賞を果たした後だ。

 中国でボーヤン選手への注目が高まり、同選手が11歳、羽生選手が14歳の頃に撮影したツーショット写真が発掘されたり、2017年の世界選手権での仲睦まじい2人の動画が次々とSNSにアップされた。

 アイスダンスのリュウ・キンウ選手が羽生選手を抱きかかえる“お姫様抱っこ”も、国営メディアの新華社通信が「2016年のNHK杯以降5回確認されている」と真面目に報じる名物行事だ。

 今大会のフィギュア団体戦の練習時に、「今大会でも羽生選手を抱っこするのか」とメディアに聞かれた柳選手は、「感染対策のためできない。日本チームも許してくれないだろう」と残念そうに答えた。

 北京が冬季五輪の開催地に決まり、中国でウインタースポーツへの注目度が高まったことと、フィギュア男子でメダルを狙える新星が現れ、羽生選手と仲良く切磋琢磨している様子がたびたび発信されることで、中国の国民は羽生選手に敬意だけでなく親しみを感じるようになった。

羽生選手を応援するのも愛国心

 8日のSPでは鍵山優真選手が2位、宇野昌磨選手が3位と力を発揮した一方、羽生選手は8位にとどまった。河北省で小学校教師として働く女性(27)は、「それでも彼が一番美しかった」と強調した。彼女は「競技のことは詳しくないが、私は彼の中国への態度が好き」と語る。

 またTikTok中国版「抖音(Douyin)」を開くと、「羽生結弦選手が中国人に愛される理由」というテーマの短い動画が大量にある。数分に編集された動画では、同選手の輝かしい実績、2014年の転倒事件、中国人選手との友情が紹介され、さらに「中国は好きですか?」とインタビュアーに質問され「I love China」と返答する様子、「感謝中国」と手書きした紙を持つ姿が映し出されている。