冷凍食品のメリット、デメリット
冷凍野菜で懸念されるもう1つの問題が栄養価。生野菜と比べてどうなのか?
「冷凍すれば栄養価は多少なりとも変化します」
と、教えてくれたのは管理栄養士で料理家の柴田真希さん。例えば野菜は、下ゆで処理の後に冷凍している。ゆでることによって、水溶性の栄養素は当然、流れ出す。ほうれん草のビタミンCやビタミンB1、B2などがこれにあたる。カリウムも水に流れ出やすい成分だ。
「ただ、ポジティブな面に目を向ければ、旬の冬に収穫したほうれん草は、夏に収穫したものに比べてビタミンC含有量が3倍あります。冷凍野菜は、旬に収穫することが多いので、加工による栄養素の減少よりもメリットを感じます」(柴田さん、以下同)
また、価格が安定しているのも魅力。
「野菜は天候や収穫量によって価格が変動しますが、冷凍野菜は大量に収穫できる時期に加工するので、生野菜に比べて価格が安定しています」
ほかのメリットも。
「業務用の玉ねぎスライスなどは、冷凍すると食物繊維(組織)が破壊され、煮込み時間が少なくてすむし、油で炒めなくても使えます。電気代が節約でき、油の使用も減って健康によい」
“食物繊維が破壊される”と聞くとイメージがよくないが、食感が変わってやわらかくなるだけのこと。食物繊維の量そのものが減少するわけではない。
「冷凍食品についてはメリット、デメリット両方を考えるべきです」
小薮さんも同じ意見だ。
「野菜を冷凍の前にゆでるのは細菌性食中毒の予防になり、農薬の濃度が下がるので一概に悪いとはいえない。冷凍で栄養が低下するのは、解凍時にドリップが出て水溶性ビタミン、ミネラルが失われるから。
しかし、少し前からプロトン凍結(温度の低下だけで凍らせる従来の冷凍に対し、磁石の力と強力冷風を組み合わせて食材を凍結する技術)が行われるようになった。これだとドリップは出ない。つまり栄養低下もないのです」(小薮さん、以下同)
ドリップとは、肉や魚を解凍するときに出る赤い汁のこと。肉や魚をゆっくり凍らせると、細胞が氷の結晶で破壊される。そのため、解凍時に壊れた細胞から組織液(うまみ成分)が流れ出るのだ。このドリップはカンピロバクターやその他の細菌性食中毒の原因にもなる。
「サバやアジを生で食べると、アニサキスで食中毒になることがありますが、冷凍するとアニサキスは死滅します。ですから青魚は冷凍のほうがいいぐらいです。ただし、アニサキスが死滅するのはマイナス20度以下、24時間以上の冷凍によってです。マイナス18度に設定されていることが多い家庭用の冷凍庫では死滅しないので注意してください」