欲しい洋服がなくワンピースを手作り
くぼしまさんは、お母様が着る洋服を求めて多くのデパートや路面店を巡ったが、その過程で大きな壁にぶつかった。
「母が望んでいるのは、きれいな色で軽くてシワになりにくい、動きやすいシンプルなワンピースでした。年齢とともに体形は変わり、関節の可動域が狭くなってしまうというのに、色味がすてきな服は細身のお嬢さん用のものばかり。
加齢によって生じる身体の変化を考慮していて、なおかつ着ていて気分が華やかになるお洋服は、見事に見つからなかったんです」
色や柄の選択肢の少なさに、愕然としたのだそう。
「いわゆるシニア向けのお店では、形は合格でも茶色や黒、グレーといった地味な色の服がほとんど。華やかさを求めたら、スパンコールがギラギラとついていたり。年齢問わず女性はお洋服を買うことが好きだと思うんですが……アイテムがとにかく少ないんです」
シニアの洋服事情を目の当たりにし、怒りすら湧いてきたというくぼしまさん。既製品を探すことはあきらめて、お母様の洋服を手作りすることに。
「洋裁ができる知り合いにお願いして作ってもらうことにしたんです。母が着やすいと言っているワンピースをもとに、試行錯誤を繰り返して、今のワンピースの型ができあがりました」
年齢とともに変化する姿勢や体形、身体の機能などを考慮したワンピースには、さまざまなこだわりポイントがある。
「身幅や肩幅はもちろん、着心地や見た目を左右するのがアームホールです。年齢とともに二の腕はサイズアップするものなので、アームホールは50cm程度あるのが理想的です。ひじが出ていると身体全体が冷えてしまうので、真夏以外は十分丈が好ましいです」
首回りにも見た目と機能性を配慮した工夫がなされている。
「年齢を重ねると首回りがやせて貧相に見えてしまうので、首元がある程度詰まったクルーネックに落ち着きました。また、腕が上がりにくくなっても簡単に閉められるように、留め具にはボタンを採用しました」
色柄だけでなく、生地の素材選びも重要なポイント。
「洋服にアイロンをかけるのはけっこうな重労働ですから。シワになりにくく、洗濯機で洗って干すだけでシワが伸びるような生地を使うことも大切です。
これまでの経験上、綿にポリエステルなどの化学繊維が少し混じっているものがおすすめです。寒ければインナーやネックウォーマー、小物で調整するのでオールシーズン使えます」